私達の勉強会

2019-08-04

関節の病気

中医学で関節痛や筋肉痛などは『痺証』の範疇で考えます。
今月は『補腎活血法による骨痺・骨痿・骨蝕の中医学治療』について広州中医学大学第一付属病院骨傷センター長の何 偉先生の講演会で勉強してきました。

演題にある骨痹・骨痿・骨蝕は耳慣れない言葉ですが、中医学における痺とはつまって通じない事をさすそうで、骨痹は骨の働きがスムーズでなくなる状態、骨痿は骨に力がでない状態、骨蝕は骨が溶ける(壊死)する状態ととらえたら良いと感じます。

現代医学の変形性関節症・痛風・慢性リウマチ・硬直性脊髄炎は骨痹にあたり、骨粗鬆症は骨痿の一つで、骨壊死は骨蝕の一つにあたるそうです。

痛むという事は不通則痛(通じざれば則ち痛む)という言い方をします。
焼き芋など食べ物が胸の辺りに詰まって痛い思いをした経験はありませんか?
スムーズに通っていかないと痛みになることがあります。
血脈・経絡の気血流れもスムーズでないと痛みになります。

私達はいつも自然環境の影響を受けています。
湿気が多くて胃腸の調子が悪いとか、暑さあたりして頭痛がするとか、乾燥で咽がいがいがするとか・・・
この環境によるもので身体の調子を崩しているのが、風・寒・熱・湿・燥・暑の六淫です。

経絡は臓腑間や身体中をつないでいてその中を気血が通っています。
経絡中の気血が充足して流れていれば邪気の入り込むすきがありません。
しかし、疲労や老化や体質虚弱など色々な理由で気血の流れにすきができればそこに六淫の邪気が入り込み流れを阻害します。・・・すると痛みになります。

骨痹においての病因は(病気になる原因)は外邪による経絡の阻閉《外的要因》と過労・老化・虚弱体質《内的要因》です。

風邪をひいた時に節々が痛い・冷えて関節がこわばる・湿気が多くて関節や筋肉が重怠いなどの経験は外邪の影響で、老化や過労など弱っている等は身体の側(内側)の問題があり、尚更外邪の影響もうけるし治りも悪く慢性化しやすいという2つの観点があるという事だと思います。

痺証をおこす外邪は風・湿・寒あるいは風・湿・熱です。
寒か熱かは局部が赤く熱をもって腫れているかどうかで見分けます。
また風・湿・寒(熱)のどの邪気が多いか(強いか)などを見分けることで方剤の運用の仕方も違ってきます。

痛みになるのは通じないからで考えれば瘀血を考慮するのは必須です。
またある一定の年齢になって関節痛になることや関節は骨と関係する事を考えれば、骨を主る腎の弱りが根っこにあると考えられます。

膝痺(膝関節症)に関しても腎虚(腎の弱り)があって風湿寒熱の邪気が誘因となり瘀血閉塞する事を念頭におくと
1骨を丈夫にする(補腎強骨)
2血の流れや経絡の流れを改善する(活血止痛・通絡止痛)
3邪気を追い出す(袪風・散寒・化湿・清熱など)

養生も重要です。
1、運動・・・関節周囲の筋力を増し安定性を上げるのに重要
2、体重のコントロール・・・肥満と膝関節痛との顕著な相関関係がある
3、精神状態の安定・・・心と痛みと関係ある
*中医学では気滞血瘀という言い方もあるが気の巡りが悪いと血の流れも悪くなり瘀血となる
 
次に骨痿についてです。
症状は腰・背中がだるい、下肢に力が入らないなど力不足の症状で骨粗鬆症などもこれに含まれます。
病因と機序は腎精虧虚と瘀血阻絡です。
腎精虧虚は腎虚のうちですが腎精の不足となると更に力のあるもの益精血の品が必要になります。

この場合も腎虚、腎精不足は腎陽虚か腎陰虚かによって違ってきます。

骨痿の予防は元気に年を重ねる為にとても大事です。
中医学の養生にそって飲食に節度があり、栄養をしっかりとり、規則正しく寝起きし、身体をやたらに疲労させず、気候に合わせて生活する
この養生は黄帝内経のはじめにのっています。

骨蝕は大腿骨頭や上腕骨頭等の壊死症についてレントゲンの画像を見せてもらって説明をうけました。
病因は①腎陰不足による虚火が腎精を消耗したり、腎陽不足により腎生髄の機能が低下して骨が養われない②瘀血により脈絡がつまって骨が養われない③酒の飲みすぎにより生じた湿熱が脈絡につまって骨が養えない・・などです。

瘀血の原因が気滞か腎虚か痰瘀の両方かによって治療法も違ってきますが、活血化瘀と行気・補益肝腎・祛痰化湿を組み合わせます。

そういった温存療法で経過観察のレントゲン写真の中に最長22年後というのがあり驚きました。

*大腿骨頭壊死症は何らかの原因によって血流が低下する事によって起き、一定量のステロイド剤の長期内服やアルコールの長期大量摂取なども原因になるそうです。

2019-05-12

4月7日8日に行われたアジア太平洋地域中医薬サミットに参加しました

中医学の学会のようなもので生殖医学・皮膚科・鍼灸の分野で論文を出している先生方の講演を同時通訳で聞く事ができました

7日午前は選択制だったので、画像も参考になる皮膚科を選択しました
午前中3時間で10人の教授や医師の発表があり、それぞれは数十分でした

祛邪法による蕁麻疹の治療  黒竜江省中医薬付属第一病院皮膚科 教授
病邪を体外に出す通路 汗法・瀉下法・淡さん利湿について各論

女性の痤瘡における中医周期療法変化のアプローチ 広東省中医病院 教授
女性の月経周期と痤瘡(にきび)について研究
月経周期に合わせて方剤選択
女性の痤瘡は肝・腎との関係が密接
治療原則:滋補腎陰・疏肝清熱・調理衝任・周期治療

日本の漢方薬局における皮膚病中成薬応用の心得 日本中医薬研究会・イスクラ産業講師
薬局における皮膚病相談の特徴・弁証・方剤の組み合わせ・症例

合局針法と湿疹の治療  オーストラリア中医薬針灸学会連合会

乳幼児アトピー性皮膚炎における小児推掌の応用 広東省中医病院 主任医師
乳幼児湿疹における病因病機
小児推掌・手技の分類(清熱・補益・袪風) 推掌処方(手技の組み合わせ)

難治性創傷潰瘍への中医学的アプローチ  上中医薬大学付属岳陽病院 主任医師
糖尿病における慢性皮膚潰瘍 特徴・外用剤の応用

強皮症における中医学外用治療法  陜西省中医病院 主任医師
発症と治療の現状・中医学的認識・外治法

帯状疱疹疼痛に対する劉老中医の治療経験 雲南省中医病院 教授
帯状疱疹の臨床所見・中医学治療・求因(水泡:湿と熱・痛み:寒熱虚実・部位は上中下)
弁証論治 湿、熱、気血、虚、寒、瘀
初期:湿熱・火毒⇒ 気血の凝滞
後期:正気の虚弱

午後の部は日本中医薬研究会の全国大会とタイアップしました

特別講演
『新時代における中医薬の役割―「補腎活血」の応用を中心に 』
国医大師 天津市中医薬研究院 教授 張大寧
中医薬の使命
腎虚血瘀論と補腎活血法
補腎活血法の応用 治療・予防・養生

『胚移植反復着床障害に対する中医学の治方策』   山東中医薬大学 教授 連方
反復胚移植失敗の原因
配偶子と受精卵の質・子宮と卵管素因・免疫素因・神経素因
女性側、男性側に分けて考察

『アトピー性皮膚炎の中医学診療および研究』   広東省中医病院 教授 陳達燦
アトピー性皮膚炎の概説・関連問題・中医学的認識・実践と考察・中医学治療

瘀血と活血化瘀の意義と臨床応用     東京有明医療大学 教授 川島 朗

婦人科における活血化瘀の応用について    南京中医薬大学 教授 談勇

解明が進む活血化瘀薬―丹参製剤を中心に
富山大学大学院工学研究部 特別研究員 横沢 隆子

8日
尋常性乾癬における”血分論治”―中医学理論へのアプローチ
上海中医薬大学付属岳陽病院 教授 李斌

背部経穴刺絡抜缶法を用いての白斑病の治療経験 黒竜江中医薬大学 教授 王遠紅

鍼薬併用による子宮内膜症の治療 上海中医薬大学付属岳陽病院 副主任 張春雁

清熱解毒法による子宮内膜癌への治療のエビデンス研究
北京中医薬大学付属東直門病院 准教授 包暁霞

肝腎理論に基づく不妊症の弁証と治療     黒竜江中医薬大学 教授 韓延華
中医学は漢方薬・鍼灸・按摩のような施術なども研究されている事がわかり勉強になりました。

2019-03-31

3月の講義は戦冬雲先生による『中国の最新情報から学ぶ中成薬の応用』でした。

逍遥顆粒・衛益顆粒・麦味参顆粒・阿膠の使われている婦宝当帰膠を中心に話をききました。

逍遥顆粒…春は肝の季節です。(五行学説)
『肝は血を主る・肝は疏泄を主る』ですから血や気血の流れのコントロールは肝と関係しています。
先生の飲んでいる中国の逍遥散の丸剤を見せて頂きましたが、お店に来る中国のお客様も逍遥散の丸剤を持っていて見せてもらった事があります。
中国では女性なら誰しも使った事があるポピュラーな漢方薬といえるのかもしれません。

逍遥散は肝の2つの機能を補うとともに相克関係にある脾をバックアップする組み合わせになっているからだと思います。

逍遥散の内容を紹介します。
柴胡…主薬…肝気の流れをよくする  助ける 薄荷(涼散)・煨生姜(辛散)
当帰・白芍…陰血を補充
白朮・茯苓・甘草…脾の運化機能をバックアップし気血の生成を補助する
(「肝は脾を克する」関係だから助けてあげないとね)

因みに加味逍遥散は逍遥散 プラス 牡丹皮・山梔子
だから逍遥散使うような症状が化熱してイライラ・怒りっぽい・顔面紅潮・口乾などか現れた時に!

五行と五臓の関係で考えると肝は木
春に木はのびのび枝をのばしたい。それは肝の同じ。だからゆったりのびのびの気持ちになれない時は逍遥散が助けになります。

私も好きな方剤で、女性のみならずストレスがかかりやすい男性にも使って頂いています。

逍遥散と同じように疏肝・補血・健脾の3つの働きがある方剤に抑肝散があります。
違いは肝木の主気である風を消せる事です。
肝血不足で肝の疏泄機能の失調により内風が吹くと身体がそよいだり、ゆれたりします。
痙攣・ひきつけ・ふらつき・ふるえなどはそのせいです。

衛益顆粒…春は寒暖差と花粉のせいで衛気は大活躍!

衛益顆粒はその名の通り衛気を益す漢方薬です。
衛気は身体の防衛隊です。鼻やのどの粘膜に集まって防衛したり、全身を巡って身体を温め毛穴を開閉して冷えから守り、急な温かさで汗とともに気血が出て行ってしまうのを防いでいます。
花粉症の人も寒暖差アレルギーの人も、衛気虚です。
もともと衛気虚なのか?なんらかの理由で衛気虚になったのか?
とにかく衛気をしっかりさせ防衛力をつけていきましょう。
その為の衛益顆粒です。

前年成都中医薬大学 耳鼻科研修の際 衛気不足の人の処方中には30gもの黄耆が入っていました。
黄耆は薬用人参と同じ補気薬ですが、人参のように飲んですぐに活力が出たと感じるものではありません。でも、服用していくと防衛力だったり・傷の修復力だったり、疲れやすさや浮腫みがとれたりと確実に身体に力がついていくと感じています。

婦宝当帰膠…春は肝・肝は血

婦宝当帰膠は当帰が6割近くしめる当帰のシロップですが、この中に阿膠も入っています。
阿膠はロバの皮から抽出したコラーゲンです。
古くから女性に愛され楊貴妃は阿膠を飲んでいたから肌のきめが細かく弾力があったとか、西太后も飲んでいたから70過ぎても少女のような肌で艶のある豊かな黒髪だったとかいわれています。

心配な事にその阿膠が近年高騰しているそうです。

女性は血が不足しやすく気は余りやすいというそうですが、婦宝当帰膠は女性の身体にはとても良い漢方薬です。

月経不順・冷え症・妊娠を希望する方・産前産後に服用して身体を整えましょう。

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