病気と漢方

2020-07-12

黄耆は私の好きな中薬の1つです
少し前には黄耆の益気固表の働きがあり玉屏風散(衛益顆粒)という方剤がある事を書きました
生薬と言われるものは中医学では中薬といいます
中薬の中には生薬に属さない食品もはいっています
例えばあずきも中薬の1つです

中薬学にみる黄耆

中薬学では黄耆の働きは主に6つあると書いてあります
補気昇陽・補気摂血・補気行滞・固表止汗・托瘡生肌・利水消腫
基本的の黄耆は補気薬ですから症状が気の不足による時に使います
 
補気昇陽・・・気を上に上げる
気血が上に昇らないと頭がボーっとする・立ち眩み・元気がなくやる気がでないなどの症状がでます 
また五臓の上の方にある心や肺に気血が届かなければ息切れや動悸になるし、上に向かうエネルギーがないと内臓が下垂します

補気摂血・・・固摂(漏れないようにする)気の働きを補い血がもれないようにする
気の働きは5つあるとされていてその1つが固摂作用です
あるべき所から漏れないようにする働きです
そのうち血が漏れないようにするのを統血作用といい脾気が担当しています
不正性器出血や皮下出血や便血なども統血不足の時もよくあります

補気行滞・・・気の推動力の不足によって滞ったのを流す
四肢のしびれや運動障害など気の不足が原因する事もあります

固表止汗・・・以前玉屏風散の事を書いたときに詳しくのせました

托瘡生肌・・・気血不足で傷などが修復しない時に使う
化膿性疾患の治りが悪い・潰瘍や傷口がふさがらないなど治す力が弱くなっている時に
*私は以前歯痕の病巣が治らず切開するのがいやで幾つかの漢方薬に煎じた黄耆を加え1ヵ月半くらい飲んで治った経験があります
利水消腫・・・水を利してむくみを解消する
水液代謝のエネルギーの不足で浮腫みが生じているので 気を益し湿を除く

以上の事からも黄耆が冷えタイプのエネルギー不足の人に良い事がわかります
どんなに優れた生薬でも体質が合わなければかえって悪くなります
身体が温に傾きのぼせやすい人にはその状態を助長させてしまいます
使用上の注意には性質が温昇で助火し固表止汗するので実証・熱症・陰虚陽盛など使えない事が書かれています

一昨年前成都中医薬大学耳鼻咽喉科で研修させてもらった時気虚のアレルギーの人の処方中には黄耆が書かれていました

補中益気湯・玉屏風散(衛益顆粒)・帰脾湯(心脾顆粒)・参茸補血丸・虚労散など黄耆の使われた処方です

補という事は即座にできる事ではないのでゆっくり身体づくりする気持ちも大事です

2020-06-08

急性熱性病と瘀血

瘀血の原因

ちょっと前に瘀血は何かを書きました(その他の病気…瘀血の話)
ではどんな事が瘀血の原因になるのでしょう
中医学の基礎によると
 1 外傷
 2 炎症
 3 高熱
 4 手術
 5 出産
 6 月経異常
 7 出血性疾患
 8 免疫異常
 9 寒冷
 10ストレス
 11心血管系の疾患
新型コロナの場合2と3肺の炎症や発熱が当てはまります
中医学には温病学があってこれはインフルエンザのような都市型の流感に対応して出てきた学問です
病気の進みを4つに分け一番深く入り込んだ状況を血分としています
出血や瘀血は血の病です

温熱の病と瘀血

清の時代の葉天士は温熱病が身体の中で衛分→気分→営分→血分と進むと考えました
これを衛気営血弁証といいます
衛分証では鼻や咽など肺衛が温熱の邪に犯され発熱・微悪寒・舌突紅・脈浮数や更に喉の腫れ口喝などが現れます
気分証になると温熱の邪が臓腑に侵入気機を阻害します
臓腑により異なりますが共通する症状は高熱・悪熱・心煩・口喝などです
営分証は温熱病の極期で高熱・口喝・心煩・不眠で酷くなると意識がもうろうとしたりします
血分証は虚と実に分類されます
実では温熱が心包を犯せば意識が混濁し、動血すれば吐血・鼻血・血尿や血便など出血傾向となる
また動風すればこわばりや痙攣がおきる
虚は高熱による消耗やもともとの体質により血虚や陰虚になっていて虚熱の症状もみられる
血が熱をもって出血傾向に血熱証といわれています
温病のような外から入ってくる温熱の邪によるばかりでなく、ストレスやイライラなどで化熱した状態から血熱になる場合もあります
*新型コロナやインフルエンザは温病の範疇です
*新型コロナはACE2受容体を入り口に細胞に侵入するそうです
この受容体は口の中に多いそうですが、発熱などで炎症がながびくと肺→血管へと
血管の細胞が炎症するとさらにACE2受容体が増えるそうです
*人の鼻や口腔粘膜は肺衛と言われる所です
風邪はひきはじめの3日が大事です・・・といつも言っていますが漢方薬も早めの服用が大事です

冠心Ⅱ号方と李連達教授

先日リモートの勉強会で李連達教授の話がでました
15年くらい前に来日し講演された事がありました
1958年頃小児のはしか、ウイルス性肺炎が大流行し多くのこども達が急性心不全を併発して亡くなったそうです
当時小児科の医師だった李先生はそれをなんとかしたいと考え冠心Ⅱ号方のような心血管病に効く冠心Ⅱ号方など丹参処方の製剤化に取り組んだのだそうです
当時の風潮として漢方を動物実験のような化学的検証に否定的だった為、機械や材料も自費でそろえて研究をしていましたが、その研究室をとりあげられたりし苦労の末、成果がみとめられました
現在中国で内服のみでなく丹参製剤の注射剤もあります

瘀血の3大症状は『痛む・しこる・黒ずむ』です
肩こり・足腰の痛み・頭痛しやすいなどはありませんか?
目の下のくま・しみ・歯茎の黒ずみなどありませんか?
静脈瘤などしこりはありませんか?
日頃活血化瘀の漢方薬や養生茶をのんでおきましょう

2020-05-06

感染・発熱・解熱剤

昭和29年生まれの私ですが、実家も薬局でした。
昔は“麻疹は一生の大病”といわれていましたが、2人とも家で治したと言っていました。
烏犀角という薬が麻疹の薬として市販されていたようです
名前からして犀角(さいの角)が入っていたのだと思われます
犀角は優れた熱さましですが今はワシントン条約で禁止されています
その両親がいつも言っていたのははしかに感染した時は
1、風にあたってはいけない
2、強い解熱剤を使うと発疹が外にでず、内側(内臓)が(ウイルスに)やられる
という事でした
私はインフルエンザも含めウイルスの疾患に子供たちがかかった時はそれを守ってきました

子供が小さい頃は病院でインフルエンザに強い解熱剤が使われていましたがインフルエンザウイルス脳症がそのせいだとわかり20年くらい前からボルタレンのよう強い消炎解熱鎮痛剤は使われなくなり、熱も38.5℃以上になったら使うよう指示される事も多いと思います(高熱でひきつけを起こす場合は別ですが・・・)

発熱はインフルエンザウイルスなどが身体に入った時に免疫細胞が活動する事によっていくつかの工程をへて脳から体温を上げる指令がでるそうです
体温が上がるとウイルスの活動がおさえられ、白血球の働きが活発になり免疫機能がたかまるそうです
テルモのホームページに解りやすく書いてあります

https://www.terumo-taion.jp/health/temperature/06.html

新型コロナの場合も人の免疫活動と言う意味では同じではないでしょうか?

そういう事においても感染初期に身体の状態にあわせた漢方薬を使う事は身体の働きをバックアップできると思っています

中医学もオンライン

先日、『新型コロナについて(中国における中医学の対応)』についてオンライン講座を受講しました
新型コロナは湿毒疫と考え、基本的病機は疫毒外侵・肺系受邪・正気虧虚です
つまり、外界から疫病が肺経(鼻・のど・気管支・肺など)に入り、正気(免疫力みたいなもの)も弱まる事により病気になる
中国で清肺排毒湯がよく使われたようです
この漢方薬は日本にはないので幾つかの漢方薬を組み合わせることで代用すると良いとの事でした

中医臨床も新型コロナに関する情報が扱われています
藤田康介先生は上海中医薬大学を卒業・博士課程も修了して医学博士で上海東和クリニック中医科に在籍し、日本の学校でも教鞭をとっておられるそうですが、中国における中医学治療について詳しく書かれています

中国において中医学も導入する割合は省によってちがいがあるそうです
武漢のある湖北省は中医学治療の使用率が低く、当局からの指示で改善されたそうです
一方広東省は当初から中医学治療が行われ『肺炎1号方』が考案され症状の緩和に一定の効果があったとして、各指定医療機関で採用されたそうです

藤田先生のいる上海は西洋医学・中医学の双方の特徴をいかした治療が受けられる恵まれた環境で、新型コロナの第一線に中医学の医療チームが送りこまれたそうです

時期や症状の重さの違いにあわせて注腸の方法なども含め治療指針が作られ、その中に回復期の処方ものっています

更に予防に関しても体質を3つに分け薬膳も含め予防法が示されています
未病先防の中医学ならではだと思います

特に虚弱体質には玉屏風散の加味方がとられています
前に書いたように玉屏風散は風邪をひきやすい人の体質強化の為の処方です

オンライン講座で新型コロナによる血栓の話がでていましたが、その後ブロードウエイの俳優が新型コロナの合併症で足を切断したという衝撃的なニュースが流れました
子供たちにも川崎病のような症状が出ているとの報告もありました

この話を聞いた時、ずっと以前に感冒の講義を聴いたときに葛根湯や桂枝湯などの芍薬は現在は白芍が使われているが、原典では赤芍がつかわれているという事を教わった事を思い出しました
赤芍は桂枝茯苓丸や冠元顆粒などに使われている活血化瘀薬にあたります
その時、風邪などの病気になると白血球活動が活発になるが白血球は大きな血球で病気がなおるが瘀血が生じる、それをみこして風邪の漢方薬に赤芍が使われたのだという話でした
漢方処方の奥深さに感心した事を覚えています

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