養生の話

2018-07-03

「現在、人は遺伝子的に120歳までといわれているけど、将来150歳までになるといわれだしているそうだよ。」
「そうするとやはり腎を補わないとね。」
「さらに肝も重要だよ。肝の事を言わない人もいるけどね。」
「でも、脾胃が弱いならいくら補腎しても無駄でしょ。脾が気血生化の源なんだから気血が補充されなければ腎も肝も養われないわけだし。」
「それはそうだ。」
というのは今朝の会話です。

中医学的に人生とは腎精だともいえます。腎精がつきれば人生もおわります。
腎には命門の火と命門も水があります。陰陽の根本である真陰・真陽も腎にあります。
『腎は生長・発育・生殖を主る』ですから、お母さんの体内で命の火を灯した時から腎の機能によって生長してきたといえます。私達が生まれ生長し・次の世代へ命をつなぐ仕組みは腎の力によるものです。
だから腎は解剖学的な腎臓でなく、つくり育てる事に関わるすべての営みが腎気、その力の元が腎精でそれらを主るのが腎です。
遺伝的に人生150年が可能になるという事は先天の本である腎(腎気・腎精)がより充実したに他なりません。

昔の書物に50代になると肝気が衰え始め、60代は心気が衰え、70代は脾気が衰え、80代は肺気が衰え、90代は腎気が衰え、100才になると五臓すべてがすっかり弱ってしまうとなっています。
腎気は命と関わっているので最後に衰える臓になっていますが、実際は腎気の力を表わした曲線は生まれたときから上昇し女子7×4才(28才)・男子8×4才(32才)をピークに下降していきます。だから下降曲線をゆるやかにしたいなら腎精を補うと良いわけです。

50代にまず肝気が衰えるのはうなづけます。その頃視力の衰えを感じる人は少なくないと思います。『肝は目に開竅する』といって肝の状態は目に表れてくるからです。
私は近眼ですが50才を超えた頃から近眼のめがねで本が読みにくくなり、始めは度をおとすくらいで大丈夫でしたが、今は遠近両用を使っています。
また、『肝は筋を主る』『華は爪にある』といい、足などの筋がつりやすくなったり、爪がもろくなったり、柔軟性を失って硬くなったりします。
さらに『肝は血の蔵』なので、肝が衰えると血の滋潤作用も低下し肌の乾燥・しわやしみが増える・髪がパサパサして白髪も増えるなどの症状がでてきます。
婦宝当帰膠で肝血を補ったり、杞菊地黄丸などで肝腎を補いましょう。

60代になり心気が衰えるとと動悸がしたり、気が弱くなってくよくよ考えたり、眠りも浅くなったり・小さな事で不安になったり涙もろくなったりします。
心には心臓の血液を送り出すポンプの働き(血脈を主る)と思考(神を臓す)する働きがあります。
例えばいやな話しを聞いて「心臓がどきどきして不安になった。」という場合心の2つの働きが影響を受けていると言えます。
動悸・息切れ・口が乾くなどの時は麦味参顆粒、
動悸・眠りが浅い・くよくよ考えやすい・物忘れが多いなどの症状がある時は心脾顆粒を、動悸・寝つきが悪く眠りも浅い・気持ちがざわざわする感じがする・舌がぴりぴりするなどの時は天王補心丹を服用すると良いです。
また心の駆血作用がよわまり瘀血がある時は冠元顆粒を併用すると良いです。

70代は脾気が弱るので、栄養の消化・吸収や水液代謝などが弱ってきます。さらに、脾気の統血作用が弱くなると出血傾向になります。疲れ易くなり、中気が落ちると内臓が下垂します。
補中益気湯・心脾顆粒・健胃顆粒・健脾散などで脾気を高めましょう。
脾は肺と相生関係で脾の衰えは肺の衰えにつながっていきます。
気血生化の元ですから、脾気が衰えると五臓全部が養われないのでしっかり補いましょう。

80代肺気が衰えます。『肺は嬌臓』といわれています。外とつながっている為に細菌やウイルス・ほこり・花粉・カビなど外界の影響をうけやすいからです。
鼻・喉は肺衛といって侵入者を入れないようにしている部分ですが、そこも弱くなって邪気を入れやすくなります。衛益顆粒(玉屏風散)・麦味参顆粒などで力をつけるとともに、風邪の季節には板藍茶で守りを強くしましょう。
また時にシベリア霊芝などを飲んで免疫力をアップしましょう。

90代は腎精を補いましょう。力のつくものが良いです。亀鹿仙・参茸補血丸・参馬補腎丸など精つくものを飲んで身体を滋養しましょう。

この養生法は先回りするのがベストです。衰えてから補うのでなく衰える前に補うのが未病先防の心得です。

*私自身は昨年の夏に胃腸を弱くしたので健脾散又は健胃顆粒・五行草茶・冠元顆粒をお湯に溶かしてのんでいます。
数年前に60代になり「あれ・これ」が増えたので毎朝のカフェオレに香ロゼア2袋をいれています。

健忘に良い心脾顆粒も1日1回はのんでいます。
すべて脾にやさしい漢方薬です。
あと薬膳としてヨーグルトに枸杞の実・なつめ・くるみなどを入れています。
老人性疣贅の予防のため薏苡仁をご飯に炊き込んでいます。
腎精を補う為、亀鹿仙を週に2~3回飲んでいます。
元気で一生中医学と関わって行きたいと思っています。

2011-11-01

 漢方も温・散寒などと伴に、補血益精(陰を補う)を心がけます。陽気は代謝する力ですが、エネルギーを燃やすには原料が必要だからです。寒を散じるばかりではエネルギー源を補う事ができません。もし、火がくすぶってうまく燃えない時はどうするでしょう?もし 火がくすぶっていて燃えにくいなら可燃剤を加える事もあるしでしょう。でも燃えるつきて足りなければ薪をくべます。どちらも必要です。陽に対し陰は必要です。陰陽は根は同じです。陰があり、陽があります。漢方を使う時の考え方も同じです。冬は陽気を補い、しっかり陰(血や精)も補いましょう。

 今、はやりの生姜も身体を温めます。ただ 少し前に生姜をとりあげましたが、陽気を守ると言う意味では乾姜といって干した生姜が適します。生のしょうがは散寒解表といって発汗して寒邪に対抗し陽気を保護します。でも発汗という意味では内なる力を消耗する場合もあります。

ですから
生姜は走(ゆ)きて 守らず
乾姜はよく走(ゆ)き よく守るといい
炮姜は守りて 走(ゆ)かずといいます。
炮姜(ほうきょう)は乾姜を炮じて炭化させたものの事です。

 ですから冬に陽気を守るには是非干した生姜を使ってください。生姜を干してアルコールと砂糖でつけるか、はちみつにつけるかしてお湯をそそいで飲むとあたたまり

冬は寒い!・・・それって当たり前? 寒い!冷える! 寒いは陽気を消耗します。寒い時、身は体温を保とうと働いてくれています。熱エネルギーを産生してくれています。寒い中で凍死してしまうのは消耗がすすんで それ以上体温を保てなくなってしまうからです。漢方の陽気はこの熱エネルギーだったり、新陳代謝力だったり、身体の機能を保つエネルギーの事です。

 ですから陽気の有る無しは生命にかかわります。冬は陽気を守る事が第一です。陽気を守る事が消耗を防ぐ事で、元気でいられる秘訣です。

 冬は温かくしておく事・・・当たり前のようで大事なことです。お腹や足もとも温かくしておきましょう。
 温かく栄養価の高い物を食べる事・・・でも食べ過ぎてはいけません。食べ過ぎて脾胃を傷つけたなら気血が作り出せないからです。つまり陽気もつくりだせません。

 沢山汗をかくような運動は避け、汗をかいたら速やかに着替えましょう。

 黄帝内経の冬の養生に以下のように書かれています。

去寒就温、無泄皮膚

 寒さを避け温かくしてすごす、皮膚の閉じている毛穴をひらいてむやみに汗をかくような事をし、体内に貯えられている陽気を消耗してはならない。・・・という意味

2011-03-01

パンダ⑤ もうすぐ 春。でも 暦の上では2月4日が立春でした。その頃はまだまだ寒かったけど、日差しはつよくなって来ていて 木々の芽が硬く膨らみはじめました。漢方で春は五行の木(もく)の季です。また五臓では肝です。五臓の色体表を持っている方は見てくださいね。

 冬に閉ざされた世界が春にはむくむくと起きだして華やかな季節を迎える準備を着々としています。陽気が外に少しづつ出て行こうとしています。陽気のエネルギーが木の芽を押し出し、枝をのばし、花の蕾を膨らせます。6日は啓蟄です。土の中に潜んでいた虫達も陽気を育てながらとうとう外界に顔を出し始めます。

 人の体の陽気も動きだしています。肝は木です。木々が自由に枝を伸ばすように、私達も陽気を発散させましょう。春の息吹を楽しみ、身体や心を楽に自由にしましょう。

 肝の疏泄機能を西洋医学に当てはめて考えてみましょう。どういった部分と身体の動きが関係しているでしょう?たとえば胃腸の蠕動運動は自律神経によって調節されています。それだけでなく目・唾液腺・気管支・心臓・血管その他多くの臓器が自律神経の調節をうけています。この自律神経の調節の働きは肝の疏泄機能と考える事ができます。また 生殖器系のホルモンの分泌なども疏泄の働きに考えられます。なにしろ身体の中のエネルギー的な部分は気の働きで、気の流れの調節は肝がやってるわけです。

 しかし 肝の疏泄=自律神経ではありません。肝の疏泄の方がもっと大きくとらえています。また気持ちの『気』とのつながりも重要視しています。陽気を上手に発散できないと鬱滞してしまします。気鬱になります。昔から精神的に問題がでるのが「木の芽時」といわれています。

 体内の伸びようとする陽気は押さえつけてはいけません。心と身体を自然と1つにして 春の生長を楽しみましょう。気は気持ちでもあるし エネルギーでもあります。この気の流れが鬱滞すると心にも身体にも影響がでます。

 ■肝は疏泄を主る・・・これは気の流れのコントロールつまり気持ちと身体を動かす力の調節機能という意味です。

 ■春はのんびりのびのび・・・うまくいかない時は逍遥丸、開気丸、抑肝眩悸散や気上散など疎肝や理気の漢方の助けをかりて調整しておきましょう。

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