私達の勉強会

2019-10-27

『癌』を中医学で考える

10月20日に癌についての講座がありました
中医学と西洋医学の両方を使って(中西医結合という)癌治療をしておられる清水内科外科医院の清水雅行先生に『がんに対する中西医結合治療』について、中医医師で中医学講師の鄒大同先生に『体質改善と発がん予防における中成薬応用』についての講義を聴きました

がんに対する中西医結合治療

我国において癌患者が増えている一方、満足な治療がうけられない人も多くいる
西洋医学の治療はがん組織に着眼し、除去・消失を目的としている為、正常組織のダメージを与え重篤な副作用や合併症を招く事も多い

中医学の治療は身体全体をとらえ、必ずしもがんの消滅を目的としない
①扶正 正気の回復をはかり自然治癒力を増強、あるいは手術・化学療法・放射線によるダメージの回復し免疫力の回復につなげる
病因になっている邪気を除く
②祛邪
術前の中医治療
補気養血・益気健脾・滋補肝腎など「補」が中心
田七(止血活血)・・・出血量が減り輸血がいらない事も
・・・以上に対する症例(膀胱がんの膀胱鏡下摘出術)

術後の中医治療

回復を促す 「補剤中心に活血・利水・清熱解毒などの祛邪も」
健脾益気で脾胃の働きを高める
術後合併症の予防に丹参が有効

・・・以上に対する症例(膵臓癌の術前、術後の中医治療による良好な経過)

化学療法
これ自体が邪毒の面もあるので虚に対しては十分配慮し、中医治療を併用する事により正気を回復させながら行う事で逆に良好な結果が得られる
弁証論治により症状により処方する
・・・症例①乳がんで化学療法使用が副作用の為使用不可で余命宣告、中医治療により回復傾向に
・・・症例②化学療法と併用で著効した5例(乳がん術後多発性肝転移・大腸がん再発肝転移・胆管がん多発性肝転移・乳がん術後再発肺転移)
すべての症例に良好な結果がみられている

放射線治療・・・放射線により炎症性の症状を呈する事から熱毒の一面があると考え方剤を決める
(放射性皮膚炎・放射性肺炎や間質性肺炎(肺陰を補う事も必要)・放射性腸炎・出血性膀胱炎他)
以上に対する症例が2例

中西医結合による症例
①余命2ヶ月の膵がんが6年間生存
②余命半年進行性肺がんが中医治療によって完治
③余命数ヶ月末期肺がん6年経過 肺転移消失
④高齢 進行性肺がん 鎮痛剤がいらなくなった 3年経過中
⑤余命1月末期膵がん3年生存
その他
清水先生の所に来る患者さんはもう手立てがない状態で来ることがとても多いそうです。
これが当初から中医治療も加えていたら結果はもっと良い物になったのではないかと話されました。

*先日『中医オンコロジー』という本をみていました
そこに担癌という言葉が書かれていました。“癌を担う”という言葉、それは癌を消す事を考えるのでなく身体を守りながらうまく共存していくという意味だと感じました
目障りなもの・自分に害を及ぼすものがあれば全力で排除しようとしがちですが、それに持てる力全てをかたむけて力を使い果たしてしまっては何にもなりません
中医の扶正祛邪の考え方を持っておきたいものです

体質改善と発がん予防における中成薬の応用
体質には先天的に持っているものと後天的に得たものが
中医学では陰陽五行・気血津液さらに寒熱や痰湿瘀血などからみる

中医学において癌になりやすいタイプは?
気血陰陽の失調
痰・瘀血・熱毒の形成

熱毒(邪毒)形成するもの・・・タバコ・ウイルス感染・カビの生えた食べ物・産業廃棄物など化学物質
邪毒の影響を受けない為には正気を養っておく
*人の身体には癌化しない為の仕組み(癌抑制遺伝子など)がそなわっている
中医学的にはそれも正気の一つと考えられる

*私達を取り巻く環境は決して良いとはいえません
汚れた空気・添加物・細菌・ウイルス・放射能・電磁波その他色々心配しだしたらきりがないので、何も食べられなくなってしまうかもしれないし、厚いマスク無しに暮らせなくなるかもしれません
しかし幸いなことに恒常性を保とうとする力が備わっています
その適応能力も正気のおかげといえます
こういう環境に暮らしているからこそ自分の状態は何が不足しているのか?気滞・痰湿・瘀血が形成されてないか?自分をしり、未病のうちにアプローチしていく事が大切だと考えます

2019-10-06

中医眼科

9月15日成都中医薬大学附属病院の眼科の老中医(名医)の廖品正教授が先生に師事2人の教授とともに来日したので、講演を聴いてきました

廖先生の講義

西洋医学的には独立して考える『目』も身体全体(五臓六腑)と経絡で繋がってるので、五臓六腑や気血津液など全面的に考えて弁証論治を行う事で的確な治療ができます

また、視機能検査・眼前部検査・内眼検査・眼圧検査など現代医学の検査は望診を更に深く行った事になるので、より弁証に役立ちます

五輪学説からも目と臓腑の関係をみる事ができます

局部の弁証と全身の弁証を合わせて考えます。

色々な症例からみると眼瞼炎が脾胃の湿熱や肺陰虚と関係していたり、眼底出血が脾の統血不足によるものだったり、別の出血では肝腎不足と脈絡の瘀血だったりと弁証は多岐に及んでいます

症状にあわせて手術など西洋医学の治療と合わせてベストな治療をめざしておられます

明目の効能がある中薬は枸杞の実・決明子・石決明・菊花・桑葉などで石決明は退翳の働きがある為白内障など角膜の病気に使われます
石決明散という方剤があり、石決明・決明子・赤芍・麦門冬・羗活・山梔子・大黄その他の中薬で構成されています。
石決明を用いたものに睛明丹ありますが「目のかすみにいい」といってみなさん数回分お持ちになります

症例の中には視神経の萎縮の症例もあり、肝腎虚損・気虚血瘀と弁証し、滋補肝腎・益気活血通竅と論治、駐景丸を用いある程度の回復をみた症例もありましたし、外傷により視力が0.15になった27歳の男性が養血活血の方剤で0.7まで回復したという症例もありました
本当に驚きですが、滋補肝腎や養血・活血という方法により持っている治癒力が引き出せたのではないでしょうか

また、目の手術後中医薬により回復が良いとの事で各手術後の中薬使用の着眼点についての話がありました

路先生の講義 ―ドライアイの中医薬治療―

涙は津液です。水液代謝と関りのある肺・脾・腎の臓腑機能に注意するのはもちろんの事、涙は肝の液ともいわれ肝の考えに入れる重要な臓腑で

肺陰虚・・・肺の潤い不足
脾胃湿熱・・・湿と熱がともにあれば乾きべたつくイメージです。
粘ったものが涙の流れる道を塞げばドライアイになります
肝腎を損ねて、肝や腎の機能が不足したり、陰血が不足すると潤わす力不足になります。

*乾くとはどういう事か?と考えれば

①潤す力の不足
②熱で乾く
③潤す為の水や栄養を運ぶ通路の流れが悪い

などが考えられます

よく使われる中薬は

枸杞子・・・滋補肝腎・益精明目
石決明・・・平肝濳陽・益陰明目
黄精・・・補気養陰・健脾潤肺
菊花・・・清肝明目・清熱平肝・疎散風熱

李先生の講義 ―緑内障の治療における中医薬の役割―
緑内障・・・視神経の萎縮、視野欠損
治療に関する着眼点

①眼圧(薬物治療(点眼薬を含めた)・レーザー手術・中医薬、中薬)
②良好な血液循環

*眼圧を下げるのは西洋医学的治療が速やかです
 しかし低眼圧緑内障もあります
 視神経を守るには 滋補肝腎・活血通絡・利水降圧の方法をとります
                 ⇓
           杞菊地黄丸+複方丹参飲(丹参・田七・氷片)
           中薬(石決明・決明子・二至丹・霊芝・地竜など)
イスクラの睛明丹は中医学的には(清肝明目・平肝熄風・袪風通絡・滋補肝腎)

2019-08-04

関節の病気

中医学で関節痛や筋肉痛などは『痺証』の範疇で考えます。
今月は『補腎活血法による骨痺・骨痿・骨蝕の中医学治療』について広州中医学大学第一付属病院骨傷センター長の何 偉先生の講演会で勉強してきました。

演題にある骨痹・骨痿・骨蝕は耳慣れない言葉ですが、中医学における痺とはつまって通じない事をさすそうで、骨痹は骨の働きがスムーズでなくなる状態、骨痿は骨に力がでない状態、骨蝕は骨が溶ける(壊死)する状態ととらえたら良いと感じます。

現代医学の変形性関節症・痛風・慢性リウマチ・硬直性脊髄炎は骨痹にあたり、骨粗鬆症は骨痿の一つで、骨壊死は骨蝕の一つにあたるそうです。

痛むという事は不通則痛(通じざれば則ち痛む)という言い方をします。
焼き芋など食べ物が胸の辺りに詰まって痛い思いをした経験はありませんか?
スムーズに通っていかないと痛みになることがあります。
血脈・経絡の気血流れもスムーズでないと痛みになります。

私達はいつも自然環境の影響を受けています。
湿気が多くて胃腸の調子が悪いとか、暑さあたりして頭痛がするとか、乾燥で咽がいがいがするとか・・・
この環境によるもので身体の調子を崩しているのが、風・寒・熱・湿・燥・暑の六淫です。

経絡は臓腑間や身体中をつないでいてその中を気血が通っています。
経絡中の気血が充足して流れていれば邪気の入り込むすきがありません。
しかし、疲労や老化や体質虚弱など色々な理由で気血の流れにすきができればそこに六淫の邪気が入り込み流れを阻害します。・・・すると痛みになります。

骨痹においての病因は(病気になる原因)は外邪による経絡の阻閉《外的要因》と過労・老化・虚弱体質《内的要因》です。

風邪をひいた時に節々が痛い・冷えて関節がこわばる・湿気が多くて関節や筋肉が重怠いなどの経験は外邪の影響で、老化や過労など弱っている等は身体の側(内側)の問題があり、尚更外邪の影響もうけるし治りも悪く慢性化しやすいという2つの観点があるという事だと思います。

痺証をおこす外邪は風・湿・寒あるいは風・湿・熱です。
寒か熱かは局部が赤く熱をもって腫れているかどうかで見分けます。
また風・湿・寒(熱)のどの邪気が多いか(強いか)などを見分けることで方剤の運用の仕方も違ってきます。

痛みになるのは通じないからで考えれば瘀血を考慮するのは必須です。
またある一定の年齢になって関節痛になることや関節は骨と関係する事を考えれば、骨を主る腎の弱りが根っこにあると考えられます。

膝痺(膝関節症)に関しても腎虚(腎の弱り)があって風湿寒熱の邪気が誘因となり瘀血閉塞する事を念頭におくと
1骨を丈夫にする(補腎強骨)
2血の流れや経絡の流れを改善する(活血止痛・通絡止痛)
3邪気を追い出す(袪風・散寒・化湿・清熱など)

養生も重要です。
1、運動・・・関節周囲の筋力を増し安定性を上げるのに重要
2、体重のコントロール・・・肥満と膝関節痛との顕著な相関関係がある
3、精神状態の安定・・・心と痛みと関係ある
*中医学では気滞血瘀という言い方もあるが気の巡りが悪いと血の流れも悪くなり瘀血となる
 
次に骨痿についてです。
症状は腰・背中がだるい、下肢に力が入らないなど力不足の症状で骨粗鬆症などもこれに含まれます。
病因と機序は腎精虧虚と瘀血阻絡です。
腎精虧虚は腎虚のうちですが腎精の不足となると更に力のあるもの益精血の品が必要になります。

この場合も腎虚、腎精不足は腎陽虚か腎陰虚かによって違ってきます。

骨痿の予防は元気に年を重ねる為にとても大事です。
中医学の養生にそって飲食に節度があり、栄養をしっかりとり、規則正しく寝起きし、身体をやたらに疲労させず、気候に合わせて生活する
この養生は黄帝内経のはじめにのっています。

骨蝕は大腿骨頭や上腕骨頭等の壊死症についてレントゲンの画像を見せてもらって説明をうけました。
病因は①腎陰不足による虚火が腎精を消耗したり、腎陽不足により腎生髄の機能が低下して骨が養われない②瘀血により脈絡がつまって骨が養われない③酒の飲みすぎにより生じた湿熱が脈絡につまって骨が養えない・・などです。

瘀血の原因が気滞か腎虚か痰瘀の両方かによって治療法も違ってきますが、活血化瘀と行気・補益肝腎・祛痰化湿を組み合わせます。

そういった温存療法で経過観察のレントゲン写真の中に最長22年後というのがあり驚きました。

*大腿骨頭壊死症は何らかの原因によって血流が低下する事によって起き、一定量のステロイド剤の長期内服やアルコールの長期大量摂取なども原因になるそうです。

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