私達の勉強会

2022-03-05

防衛力アップの漢方薬

1月28日 リモートの勉強会がありました

「玉屛風散の特徴と臨床応用」講師は黄煌(コウコウ)教授です

同時通訳で行いました

玉屏風散というより衛益顆粒というほうが知っている方も多い
玉屏風散は黄耆・防風・白朮の3味から成る方剤です

玉屏風散は自汗タイプの哮証(発作的に咽が痰でゴロゴロし・息切れしたり・呼吸が苦しくなったりする症状)・倦怠感があり虚弱で汗が多い人に使うほか・気虚の感冒で汗が多い時に使います
また発汗の処方を使っても治ったように見えてまた繰り返す時も使います

講義の中、古代の感冒の症例で【自汗淋漓】という表現があります
やはり汗は需要ポイントのようです

■玉屏風散の中薬(黄耆・白朮・茯苓)

たった3つの薬味ですが、数が少ない方が力を持った方剤と言われています
黄耆が主薬で固表止汗の働きを使ったものです

黄耆は気虚の私が好きな中薬の1つです
数年前歯茎の腫れと痛みがあり、歯から患部に向かう経路が塞がっていて切開しか方法がないという状態になった事があります
その時、排膿や清熱解毒の漢方を使っていましたが、黄耆の托瘡生肌という働きを利用し切開せずに済んだ事がありました

黄耆は他に補気昇陽・補気摂血・補気行滞・利水消腫・その他補気生血・生津止渇に利用する事もあると中薬学に書いてあります

白朮は健脾益気に使う事が多い中薬ですが、これもまた固表止汗の働きがあります

防風はよく風邪(ふうじゃ)に対する処方に入っています

袪風の働きがある為 荊防敗毒散・川芎茶調散などの感冒の漢方薬や独歩顆粒など痺証の漢方薬につかわれています
玉屏風散では防邪の他 黄耆・白朮の止汗の働きを強めるといわれています

■衛気不足って?

人体における気は『自らの運動・変化を創出する基本的な要素』と中医学の基礎には書かれています
つまり、身体の動的な働きをする形のない物質の事で働きによって4つに分類されています
そのうち外邪の侵入を防衛する気を衛気といいます
衛気は体表を保護し、汗腺の開閉による体温を調節し、内臓を温め皮毛を潤しています
古典に「衛気は分肉を温め皮膚を充たし、腠理を肥し開闔を司る」「黄耆よく三焦を補いて衛を実す」「無汗をよく発し、有汗をよく止め」とあるので衛気不足の症状があれば必ず有汗でなくても良いと私は考えています
衛気の不足(衛表不固)による症状としては風寒や風熱による感冒・アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・喘息や風寒湿で悪化する関節炎や筋肉痛なども考えられます

■黄煌教授による玉屛風散

黄煌教授は色々な衛気不足の病に応用していて幾つかの症例をあげて説明した
症例1 喘息型アレルギー性鼻炎・・・喘息発作が治まった後玉屛風散と小青龍湯加石膏
症例2 ランゲルハンス島細胞組織球症の感冒・自汗・・・玉屏風散を含む13種の中薬
症例3 アレルギー性紫斑病・・・玉屏風散+桂枝湯加減
症例4 皮膚亀裂・・・玉屛風散+黄耆桂枝五物湯
症例5 慢性腎炎・・・玉屏風散を含む10種の中薬
症例6 再生不良性貧血・・・玉屏風散+紅棗と附子理中湯を交互に使用後玉屏風散のみ
症例7 多発性骨髄腫・・・玉屛風散+真武湯+五苓散と黄耆粥と黄耆茶で18年間病態安定
*症例はすべて湯液(煎じ)で中薬の量も多く使われています

2019-12-31

令和元年12月 中医学勉強会

常見病{癌の予防とケア・・・中医学的考え方} 中医学講師 高橋楊子先生 (証の診方・治し方)など著書多数)

日本において2人に1人は癌になるといわれているそうですが、よくなる事も多くなっているそうです
不治の病というイメージから癌を患いつつも伴に生きていく時代になってきているのかもしれません

お店にも10年前に癌をしましたとか中には30年前に癌を患いましたなどとおっしゃる方がいらっしゃいます

癌とは「遺伝子変異によって細胞が無制限に増殖し続け、元の臓器を離れても増殖続けることができるものを指す」「また隣接の組織へ浸潤し、血液やリンパの流れに乗って遠隔転移して、他の正常組織から栄養を奪って命を脅かす悪性なものである」

遺伝子の変異の原因になるものは以下のようです
1、ウイルスや細菌の感染
2、タバコ・暴飲暴食・焦げたもの・カビの生えたもの・熱すぎるもの・塩漬け
3、慢性疲労・精神的ストレスの蓄積
4、放射線・紫外線など過度の浴びる
5、過労
6、老化

*この事から考えると身体全体の弱り(過労・老化・慢性疲労)などは免疫機能や組織や細胞の力を弱らせる事と関係しますし、ウイルスやたばこ・熱すぎる等は細胞を傷つけることに関係すると思います

中医学は癌を邪気と考え正気を整えることで邪気に勝つ身体づくりを一番に考えます

正気が弱るとは気血両虚・臓腑の虚損・陰陽不和などです
正気を扶助します

邪気は癌毒ともいわれ、性質か熱毒・寒毒・痰湿・瘀血・気滞などがあります
祛邪(邪気を取り除くこと)をします

昔から『邪の集まる所、その気か必ず虚す』
『正気が内にあれば、邪が入りこめない』
などといわれます

よく「冷えは癌になりやすいとききますがそうですか?」などとお客様に質問されることがありますが、冷えも熱もどちらもよくありません

弁証論治として気血両虚に癌毒・気陰両虚に癌毒・陽虚に癌毒
に対する症状と治療の方法や使う方剤などについて

術後の中医学ケア
1、胃がん
ダンピング症候群に注意・・・脾胃が虚損して運化が失調している・・・益気扶正
2、肺がん
呼吸障害など・・・肺気の虚損・肺陰の虚損を考慮
3、大腸がん
消化吸収障害・・・気血の虚損・運化失調
4、肝臓がん
胸脇部の脹痛、消化吸収障害・・・気血虚損・気滞血瘀
5、子宮がん
患部の疼痛・排尿障害・リンパの浮腫・精神症状・・・気血虚損・湿毒残留

*中医学ケアして虚損を補う事により回復もちがってくるはずです
*癌になるとは邪が盛んになって正気は虚した状態です
癌の芽を絶えず正気は抑えています
0.1mmの癌が1cmになるのに10年から20年
1cmから10cmになるのに3~5年
だそうです
それならば正気を扶助し体内環境を整えておきたいものだと感じました

2019-10-27

『癌』を中医学で考える

10月20日に癌についての講座がありました
中医学と西洋医学の両方を使って(中西医結合という)癌治療をしておられる清水内科外科医院の清水雅行先生に『がんに対する中西医結合治療』について、中医医師で中医学講師の鄒大同先生に『体質改善と発がん予防における中成薬応用』についての講義を聴きました

がんに対する中西医結合治療

我国において癌患者が増えている一方、満足な治療がうけられない人も多くいる
西洋医学の治療はがん組織に着眼し、除去・消失を目的としている為、正常組織のダメージを与え重篤な副作用や合併症を招く事も多い

中医学の治療は身体全体をとらえ、必ずしもがんの消滅を目的としない
①扶正 正気の回復をはかり自然治癒力を増強、あるいは手術・化学療法・放射線によるダメージの回復し免疫力の回復につなげる
病因になっている邪気を除く
②祛邪
術前の中医治療
補気養血・益気健脾・滋補肝腎など「補」が中心
田七(止血活血)・・・出血量が減り輸血がいらない事も
・・・以上に対する症例(膀胱がんの膀胱鏡下摘出術)

術後の中医治療

回復を促す 「補剤中心に活血・利水・清熱解毒などの祛邪も」
健脾益気で脾胃の働きを高める
術後合併症の予防に丹参が有効

・・・以上に対する症例(膵臓癌の術前、術後の中医治療による良好な経過)

化学療法
これ自体が邪毒の面もあるので虚に対しては十分配慮し、中医治療を併用する事により正気を回復させながら行う事で逆に良好な結果が得られる
弁証論治により症状により処方する
・・・症例①乳がんで化学療法使用が副作用の為使用不可で余命宣告、中医治療により回復傾向に
・・・症例②化学療法と併用で著効した5例(乳がん術後多発性肝転移・大腸がん再発肝転移・胆管がん多発性肝転移・乳がん術後再発肺転移)
すべての症例に良好な結果がみられている

放射線治療・・・放射線により炎症性の症状を呈する事から熱毒の一面があると考え方剤を決める
(放射性皮膚炎・放射性肺炎や間質性肺炎(肺陰を補う事も必要)・放射性腸炎・出血性膀胱炎他)
以上に対する症例が2例

中西医結合による症例
①余命2ヶ月の膵がんが6年間生存
②余命半年進行性肺がんが中医治療によって完治
③余命数ヶ月末期肺がん6年経過 肺転移消失
④高齢 進行性肺がん 鎮痛剤がいらなくなった 3年経過中
⑤余命1月末期膵がん3年生存
その他
清水先生の所に来る患者さんはもう手立てがない状態で来ることがとても多いそうです。
これが当初から中医治療も加えていたら結果はもっと良い物になったのではないかと話されました。

*先日『中医オンコロジー』という本をみていました
そこに担癌という言葉が書かれていました。“癌を担う”という言葉、それは癌を消す事を考えるのでなく身体を守りながらうまく共存していくという意味だと感じました
目障りなもの・自分に害を及ぼすものがあれば全力で排除しようとしがちですが、それに持てる力全てをかたむけて力を使い果たしてしまっては何にもなりません
中医の扶正祛邪の考え方を持っておきたいものです

体質改善と発がん予防における中成薬の応用
体質には先天的に持っているものと後天的に得たものが
中医学では陰陽五行・気血津液さらに寒熱や痰湿瘀血などからみる

中医学において癌になりやすいタイプは?
気血陰陽の失調
痰・瘀血・熱毒の形成

熱毒(邪毒)形成するもの・・・タバコ・ウイルス感染・カビの生えた食べ物・産業廃棄物など化学物質
邪毒の影響を受けない為には正気を養っておく
*人の身体には癌化しない為の仕組み(癌抑制遺伝子など)がそなわっている
中医学的にはそれも正気の一つと考えられる

*私達を取り巻く環境は決して良いとはいえません
汚れた空気・添加物・細菌・ウイルス・放射能・電磁波その他色々心配しだしたらきりがないので、何も食べられなくなってしまうかもしれないし、厚いマスク無しに暮らせなくなるかもしれません
しかし幸いなことに恒常性を保とうとする力が備わっています
その適応能力も正気のおかげといえます
こういう環境に暮らしているからこそ自分の状態は何が不足しているのか?気滞・痰湿・瘀血が形成されてないか?自分をしり、未病のうちにアプローチしていく事が大切だと考えます

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