玉屛風散の講義より

防衛力アップの漢方薬

1月28日 リモートの勉強会がありました

「玉屛風散の特徴と臨床応用」講師は黄煌(コウコウ)教授です

同時通訳で行いました

玉屏風散というより衛益顆粒というほうが知っている方も多い
玉屏風散は黄耆・防風・白朮の3味から成る方剤です

玉屏風散は自汗タイプの哮証(発作的に咽が痰でゴロゴロし・息切れしたり・呼吸が苦しくなったりする症状)・倦怠感があり虚弱で汗が多い人に使うほか・気虚の感冒で汗が多い時に使います
また発汗の処方を使っても治ったように見えてまた繰り返す時も使います

講義の中、古代の感冒の症例で【自汗淋漓】という表現があります
やはり汗は需要ポイントのようです

■玉屏風散の中薬(黄耆・白朮・茯苓)

たった3つの薬味ですが、数が少ない方が力を持った方剤と言われています
黄耆が主薬で固表止汗の働きを使ったものです

黄耆は気虚の私が好きな中薬の1つです
数年前歯茎の腫れと痛みがあり、歯から患部に向かう経路が塞がっていて切開しか方法がないという状態になった事があります
その時、排膿や清熱解毒の漢方を使っていましたが、黄耆の托瘡生肌という働きを利用し切開せずに済んだ事がありました

黄耆は他に補気昇陽・補気摂血・補気行滞・利水消腫・その他補気生血・生津止渇に利用する事もあると中薬学に書いてあります

白朮は健脾益気に使う事が多い中薬ですが、これもまた固表止汗の働きがあります

防風はよく風邪(ふうじゃ)に対する処方に入っています

袪風の働きがある為 荊防敗毒散・川芎茶調散などの感冒の漢方薬や独歩顆粒など痺証の漢方薬につかわれています
玉屏風散では防邪の他 黄耆・白朮の止汗の働きを強めるといわれています

■衛気不足って?

人体における気は『自らの運動・変化を創出する基本的な要素』と中医学の基礎には書かれています
つまり、身体の動的な働きをする形のない物質の事で働きによって4つに分類されています
そのうち外邪の侵入を防衛する気を衛気といいます
衛気は体表を保護し、汗腺の開閉による体温を調節し、内臓を温め皮毛を潤しています
古典に「衛気は分肉を温め皮膚を充たし、腠理を肥し開闔を司る」「黄耆よく三焦を補いて衛を実す」「無汗をよく発し、有汗をよく止め」とあるので衛気不足の症状があれば必ず有汗でなくても良いと私は考えています
衛気の不足(衛表不固)による症状としては風寒や風熱による感冒・アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・喘息や風寒湿で悪化する関節炎や筋肉痛なども考えられます

■黄煌教授による玉屛風散

黄煌教授は色々な衛気不足の病に応用していて幾つかの症例をあげて説明した
症例1 喘息型アレルギー性鼻炎・・・喘息発作が治まった後玉屛風散と小青龍湯加石膏
症例2 ランゲルハンス島細胞組織球症の感冒・自汗・・・玉屏風散を含む13種の中薬
症例3 アレルギー性紫斑病・・・玉屏風散+桂枝湯加減
症例4 皮膚亀裂・・・玉屛風散+黄耆桂枝五物湯
症例5 慢性腎炎・・・玉屏風散を含む10種の中薬
症例6 再生不良性貧血・・・玉屏風散+紅棗と附子理中湯を交互に使用後玉屏風散のみ
症例7 多発性骨髄腫・・・玉屛風散+真武湯+五苓散と黄耆粥と黄耆茶で18年間病態安定
*症例はすべて湯液(煎じ)で中薬の量も多く使われています