こころと病気

2008-05-01

 なんとなく体調がわるい・・・という人がこの時期多いです。5月病かな?今年は特に寒暖の差がおおきく、北海道なんか真夏から真冬へと・・・いままでこんなことあったかしら・・・というほどです。ストレスは 精神的なものばかりではありません。
他に 環境的ストレス・肉体的ストレスもあります。よく身体が気候の変化についていけない・・・などといいますが、これは環境ストレスに適合できず身体に影響が出た状態といえます。

 そんな時漢方ハーブのシベリア人参茶がお勧めです。心のストレスばかりでなく環境ストレスにも適合しやすくなるお茶です。一度お試しください。

**娘との会話

「わたし この頃へんだよ。」
「冷やしただけじゃないの?」
「ちがうよ。温かくしてるよ。」
「パンプス用の靴下しかはいて行かなかったでしょ。」・・・絶対冷やしてるよ。・・・
「いつからなの?」
「連休くらいからだよ。
よく頭痛するし、目が変でクラっとしたり、気持ち悪かったり、お腹へんだし、首も痛かったり、だるいし、鼻水で風邪っぽかったり・・・」

 ・・・・・・(などと言ってるわりに夕べは友人と外食して帰って来てたけど)・・・

「それって、気候のせいで身体がストレスになってるんだよ。」
「今日はこれを飲んで出かけてね。 星火温胆湯・キョロウ錠・ホノビエン」

 翌朝・・・雨・・・

「調子はどう?」
「鼻以外はよくなったよ。」
「じゃあ、もう少しつづけてね。」

 ストレスというと精神的なストレスを思い起こす事が多いので、

「ストレスは全然ないです」
「楽天的だからストレスはないです」

 とか言われる方もいらっしゃいます。しかし環境的ストレスや肉体的ストレスは以外に多く、私達はその影響をうけています。中医学的には気の巡りに支障をきたすので色々な症状となって現れます。ストレスは気のスムーズな流れを停滞させます。そうすると、身体を営むエネルギーがうまく働かない所が出てきます。

 大勢が道を歩く時、整列して歩いていけば目的地まで全員スムースにつきますが、速く行こうと走る人・道草する人・横に長い列を作って歩く人などいて皆がバラバラだと道の所々が混雑してしまって、なかなか到達できません。気の流れの停滞とはそんな状況です。ですからあちこちに症状がでます。弱い所にでやすく、移動し易く、変化しやすく、張る膨れるなど気体が溜まるような症状がでます。移動や変化は風の性質で、ストレスが肝との関わりが強く、肝の気は風だからです。

 ストレスはエネルギーの変調ですから、身体の調子の悪さとなって現れます。エネルギーの停滞(気滞)症状には理気薬中心につかいます。理気薬が沢山つかわれているのが開気丸です。香蘇散や半夏厚朴湯、また夏風邪や胃腸型感冒の漢方薬で知られる勝湿顆粒も充分な理気薬がつかわれています。また落ち着かないなど、煩躁感は化熱と考え、清熱除煩・養心安神の中薬が加わったイスクラ温胆湯を服用します。

 私 自身はイスクラ温胆湯があっている人が多いと考えています。何故なら、胃腸症状を伴う方が多いからです。また、肝の疏泄の働きも失調している時は逍遥丸・四逆散・柴胡桂枝乾姜湯その他、柴胡剤をかんがえます。早めに変調にきずいて服用すると2~3日で改善します。

 また、繊細で傷つき易いタイプの人・イライラし易い人・几帳面な人・眠りが浅い人などはストレスに弱いので、日頃、血や肝陰を充分補う事、また疏肝・理気・瀉火の漢方を体質に合わせて加えるなどして飲んでおきましょう。

2007-03-01

パンダ① 「なんだか憂鬱な気分」というのは誰でもあることです。でも・・・「2週間以上憂鬱で、なんにも楽しくない」・・・これはうつ病かもしれません。というのが『うつ病』の基準です。うつ病の人は脳の中のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が不足していることがわかっています。西洋医学の場合、脳という部分に対して治療がなされます。

 中医学ではどうでしょう。中医学では身体全体を考えます。漢方(中医学)でうつ病を考える時、病気に至った原因を考えます。また性格、生活環境、食事なども関係しています。もともと七情内傷といって感情が身体をきずつけるという理論があり、心と身体は密接な関係があるとされています。精神的ストレスの他、過労や出産など身体にかかる負荷がひきがねになる事も多く見られます。また更年期、過剰なダイエットなどによるホルモンの乱れが心(こころ)に影響する事もよくあります。

 漢方でとらえるのはこころや気の巡りです。それをとりまく五臓や気血津液があります。五臓六腑や気血津液がしっかりして丈夫なこころもつくられます。こころと関係があるのは『心』気の巡りと関係が深いのは『肝』です。五臓は相生・相克の関係で結びついているので、他の臓腑も影響します。また、脾胃の働きが弱く、水の運化失調によって出来た『痰』が集まり ストレスやイライラする事により熱化すると気の通り道が塞がって鬱滞してしまい憂鬱感が生じます。この痰は直接見えない所にあるので、無形の痰といいます。

 この形の無い痰の存在を知るにはどうしたらいいのでしょう?舌の苔がベタベタした感じは痰の存在を表します。また痰が出たり、喉に痰が絡んだり、気持ち悪くなり易かったりなどの身体からでている信号もみます。また肥人多痰(太っている人は痰が多い)といいますが、脂肪は痰のうちです。無形の痰が血脈や経絡を塞ぐことが脳梗塞・認知症・心筋梗塞などの原因になることもあります。

 人の心の状態は一筋縄ではいかない複雑なものです。あることがきっかけでうつ病になった。ある一言がきっかけでうつ病がよくなっていった。家族の支えがあったから克服できた。なぜ脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの物質は減ってしまったのでしょう?心は本当に脳なのでしょうか?何故頭でなく胸がくるしくなったりするのでしょう?まったく複雑で不思議な感じですが、心も身体もどちらも自分です。心にも身体も気血津液や五臓など陰陽バランスがとれて元気でいられます。とにかく心は複雑ですがダメージを受けたとき脳の中をのぞいてみるとセロトニンとかノルアドレナリンとか、物質的に変化が生じていたりするかもしれません。

 これは単なる1つの現象だと思います。この現象に対して物質を脳内に増やそうというのは西洋医学的発想です。減ってるセロトニンを増やせばいい、ドーパミンを増やせばいい。それが西洋医学の薬です。でも実際は何故減ったのか?その原因にアプローチしていません。一時的に減ったのであれば、補充すれば解決します。でも 何らかの原因で減り続けているなら、ずーっと使っていくことになるし外から与えられ続ければ分泌をストップする場合もあります。人の身体はあちこちにフィードバックシステムが働いているからです。

 中医学(漢方医学)のアプローチは違います。五臓六腑や気血の状態からみていきます。七情内傷といって心と身体は結びついているからです。血の不足や気の状態、臓腑の弱さや機能失調が精神状態に影響しているからです。人は心は縛られずのびのびしていたいものです。こののびのびと肝が関係しています。五行の木は肝で春・風・酸・怒・・・など関係しています。木が枝をのばしのびのびと天に向かって伸びるように肝ものびのび陽気をはぐくみたいのです。

 これが失調するとどうなるでしょう?外からは環境の改善とカウンセリング、内からは疏肝・柔肝・養血などの方法で状況の改善を図ります。また『心は神を蔵す』といって 大脳の思考する力は心(しん)にあるとされています。つまり考えすぎる(思うわずらう)と心に影響がでます。心が病的な状態になると不安・不眠・煩躁などの症状がでてきます。また酷いときは妄想・幻覚などもでます。ここまで酷くなると心が正常な働きができていない状態です。気血の流れがとどかない状態(心此処にあらずで正常な思考ができなくなっている状況)で開竅薬なども入れていく必要があります。基本的には心も肝も血によって養われるわけですから、血の不足がない事が基本です。

2006-05-01

 中医学で心が元気でない状態の1つは「鬱証(うつしょう)」です。うつ病も鬱証に入る面もありますが、うつ病とまではいかない部分も入ります。ストレスにより気が鬱滞しているのが鬱証です。つまり身体の気機の鬱滞です。スムーズに巡れず、動けず、滞って、鬱積している状態のことです。症状としては憂うつ・気持ちが不安定でおちつかない、不安感・怒ったり泣いたりし易くなる・睡眠異常など心の症状の他、咽に異物が詰った感じや胸の脇の部分を中心として張るような痛みがでたりします。

 鬱証を考えるのに重要なのは「肝」「脾」「心」です。しかし「肺」や「腎」を全く問題にしなくていいかというと、そうではないと思います。肺は「一身の気を主る」といい「生命活動の原動力である元気の源は腎から発せられる」「久病は腎に及ぶ」などの理論があります。ストレスにより心がダメージをうけることにより身体の気機が鬱滞する『鬱証』の対処の仕方は気機疏通する事(通じさせ動かし巡らす事)です。早いうちに気機の疏通をはかることで、病気にならずにすんだり酷くならずにすんだりします。

 また、虚と実を把握して実証は舒肝理気(肝をのびやかにして、気をめぐらす)ことを中心に行い、虚証は補益気血などを中心にして身体の力不足をたすけることを中心におこないます。この事をみるだけでも中医学って親切だと思いませんか?身体のゆがみや不足の補正術が中医学です。

中医学で実証は3タイプあります。難しい言葉ですが肝気鬱結・気鬱化火・気滞痰鬱です。簡単にいうと

1、イライラ・憂うつ・溜息タイプ
2、上の症状+落ち着きがなく怒りっぽい・口が乾く・口が苦い・目が赤いなど火なあるタイプ
3、咽の詰まり感・息苦しいような胸苦しいような感じがするタイプ

 教科書では1は柴胡疏肝散加減2は丹梔逍遙散合左金丸加減3は半夏厚朴湯加減となっています。加減となってのは体質に合わせて調整する為です。例えば食滞を伴えば晶三仙のような消食化滞するものを加え、血滞があれば活血化おのものを加えます。化火「火に化す」ということを考えてみましょう。

火の性質を思えばなるほど とうなずけます。
火は上に燃え上がり、火の色は赤で、色々なものを焼き、其の熱は周囲をかわかします。
カッとしやすい・怒りっぽい・口の乾き・目赤・舌紅・耳鳴り・のぼせなど火がある印です。

虚証も3タイプです。

1、憂鬱傷脾
2、心脾両虚
3、陰虚火旺

 どのタイプも血の不足により心が養われないことが原因となっています。つまり、身体の消耗が原因ということです。

1はうつろで、不安定で、嘆き悲しみ時々欠伸が出るタイプ
2は思い悩むことからおき、ちょっとした事でドキドキしたり、眠りが浅い、物忘れで食欲不振など胃腸症状も伴うタイプ
3は陰血不足の為虚陽が浮上するので動悸、寝つけない、落着かず怒りっぽい、口が乾く、ほてりなど火の症状が伴うタイプ

 日本人がそうなのか私の周りを見ると2タイプが多いと思います。根が真面目で物事に対し真剣に考え取り組む反面、壁にぶつかると考えすぎ思いすぎで心脾を消耗してしまいます。その為、気持ちが鬱傾向になる、眠りが浅い、逆に昼眠い、だるくてやる気がでないなどの状態になります。

 実は肝が中心・虚は心や脾が中心になっているようです。肝は感情・心はこころと考えるとわかりやすいと思います。ストレスや過度な緊張により感情面が鬱積したりイライラしたりします。また、くよくよ考えることはこころに悪影響を及ぼします。肝と心の失調は実際にはが同時に見られることも多いと思います。

 精神的な安定と血は深いつながりがあります。「心は神を蔵す」の神は精神・意識・思推活動をさし、「肝は魂を蔵する」の魂は神の変じたものです。肝血が不足するなら魂が、心血が不足するなら神がよりどころを失うとされます。「女性は血が不足し易く、気は余りやすい」といわれます。無理なダイエットや偏食、過労、産後の不養生、流産などによる血虚から精神面に支障をきたしやすいので注意が必要です。

 中医学の治療は病態に応じて複雑です。鬱滞し巡らないものをどうやって解きほぐすかを考えなくてはいけないでしょう。大きな力がいるか?小さな力で大丈夫か?鬱滞の強さもそれぞれです。また、こころや感情の場である肝や心はどのくらい弱っているのか?肝に抑え込まれた脾は?弱った母の心に養ってもらえない脾は?事態を把握するのに名探偵が必要です。また、直接鬱滞を動かす努力もしてみるのも大切。

 太極拳や気功・瞑想して気の流れを感じるようにしたり・深呼吸・大きな声で歌う・運動で血を巡らし、汗をかいて湿を発散するなどいろいろ工夫もできます。重症化するとそういったことをする気にもなれなくなります。そのときは無理せず、漢方薬を飲んでゆっくり時期を待ちましょう。

私自身も鬱になってるのに気が付くことがあります。エー!なんて言わないで下さい。わたしもデリケートな女性なんですから・・・

なんだか気がそわそわして落着かないときは逍遥丸を
午前中からだるく調子が出ない時も逍遥丸を
やる気が出ないし頭が働かないときは香ロゼアを
だるさがひどいときは香西洋参を加えます。
なんだか悲しい気分になる時は心脾顆粒を
いつもは5分以内寝入ってしまうのに長引く時や、夢が多くて眠りが浅い時も心脾顆粒を数日つかいます。

*こころは弱りきってしまうと時間がすごーーーくかかるので早めに対処するようにしています。

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