こころと病気

2006-05-01

 最近「ひきこもり・家庭内暴力」などの問題がよくとりあげられています。中医学では子供の特徴は「稚陰稚陽」とされています。気血は未だ足りず、脾胃は弱く、腎気も未だ充実せず、そう理(身体を外邪の入り口の汗孔)もしっかりしていない、また神気(精神)も虚弱…つまり心も身体も発達途中だということです。

 赤ちゃんのことを「其の肉脆く、血は少なく、気は弱い」といっています。子供は神気虚弱・気弱(心が未発達)ということを理解して考える事が大切だと思います。未発達な心を作っていくのが「触れる・見る・聞く・嗅ぐ・味わう」の五感です。赤ちゃんはお母さんの肌に触れ・香を感じ、声を聞き、微笑みを見ながら、お乳の味を知る。安心感とつながっています。この五感は五臓とつながりがあります。耳は腎・目は肝・舌は心・肌は脾・鼻は肺です。「三つ子の魂百まで」といいますが、五感と五臓はつながりから考えても幼児期の重要さがわかります。

 子供は稚陰稚陽なので陰陽のバランスを大切に育てなくてはいけないと思います。大人の生活リズムに子供を合わせ、夜中まで起きているのもよくないのです。身体を養い温め守る「営衛の気」は昼は陽分を巡り、夜は陰分を巡ります。陰が深まる時は深い眠りについているのがいいのです。この陰陽の理論は昼に交感神経が・夜に副交感神経が優位の自律神経の働きとも重ねて考えることができます。

 性格は人それぞれです。もともと繊細だったり、頑固だったり、おおらかだったり… そういうのは個性だと思います。漢方では七つの感情(喜・怒・思・憂・悲・恐・驚)は五臓と関連しています。五感と五臓の関係もあります。

目-肝-怒 舌-心-喜 肌-脾-思 
鼻-肺-悲と憂 耳-腎-恐と驚

 気血津液精などの充足と正常な運行により維持されている五臓の状態は感情に影響しています。感情はとても大事なものです。豊かな感情が五臓を育てます。しかし、いき過ぎた感情が長期に渡ると五臓を傷つけます。心の元気と胃腸の働きは関係していることが多いです。中医学で言えば脾胃気虚と関係しているということです。

 赤ちゃんでもよく泣く子はお腹の調子が悪い事が多いし、風邪をひきやすいなど肺も弱い時もあります。五臓の関係で考えると脾は肺の母・脾は心の子です。脾は五気の内「思」で、脾虚だと思いすぎ(考えすぎる)傾向になります。思慮過度になると脾ばかりでなく、其の母の心も弱って「いろいろくよくよ考えて、眠りも浅い」心脾両虚と言う状態になります。心と脾が弱ってこうなってるのに放っておいていいでしょうか?或いは安定剤で抑えただけでいいのでしょうか?

 本来、子供や若者は陽気が多く元気ではつらつとしているはずです。「今日は1日中部屋で静かにしてらっしゃい」といわれてもつまらなくて仕方がないものです。引きこもっている状態は気が鬱滞している状態です。「肝の疏泄を主る」働きが失調しています。気は身体を円滑に営む推動力ですから体調も思わしくなくなり、だるい、疲れ易い、胃腸の調子が悪い、頭がボーっとする等、気滞に気虚(気が足りない)の症状を伴うことが多いのです。急に怒ったり、暴力的になるのは鬱滞した気が暴発するからです。

 肝は感情面とのつながりが強く、ストレスによるダメージを受け易いものです。漢方薬は肝の特性や肝の虚実・他の臓腑へ影響が及んだかなど考えて使います。ストレスによるダメージは個人差があります。臓腑のつよさも関係しますが、考え方によって大きく違ってきます。

 「笑われる事が大好きで芸人になった。」というのを聞いた事がありますが、笑われるのは大嫌いな人もいます。子供の小さい時に話してる事があまりに可愛らしいので笑ったらすねてしまった事があります。考え方のチェンジが人生を大きく変える事も多いと思います。「考え方1つで180度ちがうんです。幸せな時を過ごせるか、そうでないかが…」とお客様がいってらっしゃいましたが、簡単そうで難しい事です。

 この事から考えてもカウンセリングの重要性がわかります。ストレスと肝鬱(気の滞り)は双方向です。肝は将軍といわれ、他の臓腑への影響がおおきいのです。きれると言う状態は鬱滞している肝気が上逆した状態です。

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