令和元年10月 癌に関する講座

『癌』を中医学で考える

10月20日に癌についての講座がありました
中医学と西洋医学の両方を使って(中西医結合という)癌治療をしておられる清水内科外科医院の清水雅行先生に『がんに対する中西医結合治療』について、中医医師で中医学講師の鄒大同先生に『体質改善と発がん予防における中成薬応用』についての講義を聴きました

がんに対する中西医結合治療

我国において癌患者が増えている一方、満足な治療がうけられない人も多くいる
西洋医学の治療はがん組織に着眼し、除去・消失を目的としている為、正常組織のダメージを与え重篤な副作用や合併症を招く事も多い

中医学の治療は身体全体をとらえ、必ずしもがんの消滅を目的としない
①扶正 正気の回復をはかり自然治癒力を増強、あるいは手術・化学療法・放射線によるダメージの回復し免疫力の回復につなげる
病因になっている邪気を除く
②祛邪
術前の中医治療
補気養血・益気健脾・滋補肝腎など「補」が中心
田七(止血活血)・・・出血量が減り輸血がいらない事も
・・・以上に対する症例(膀胱がんの膀胱鏡下摘出術)

術後の中医治療

回復を促す 「補剤中心に活血・利水・清熱解毒などの祛邪も」
健脾益気で脾胃の働きを高める
術後合併症の予防に丹参が有効

・・・以上に対する症例(膵臓癌の術前、術後の中医治療による良好な経過)

化学療法
これ自体が邪毒の面もあるので虚に対しては十分配慮し、中医治療を併用する事により正気を回復させながら行う事で逆に良好な結果が得られる
弁証論治により症状により処方する
・・・症例①乳がんで化学療法使用が副作用の為使用不可で余命宣告、中医治療により回復傾向に
・・・症例②化学療法と併用で著効した5例(乳がん術後多発性肝転移・大腸がん再発肝転移・胆管がん多発性肝転移・乳がん術後再発肺転移)
すべての症例に良好な結果がみられている

放射線治療・・・放射線により炎症性の症状を呈する事から熱毒の一面があると考え方剤を決める
(放射性皮膚炎・放射性肺炎や間質性肺炎(肺陰を補う事も必要)・放射性腸炎・出血性膀胱炎他)
以上に対する症例が2例

中西医結合による症例
①余命2ヶ月の膵がんが6年間生存
②余命半年進行性肺がんが中医治療によって完治
③余命数ヶ月末期肺がん6年経過 肺転移消失
④高齢 進行性肺がん 鎮痛剤がいらなくなった 3年経過中
⑤余命1月末期膵がん3年生存
その他
清水先生の所に来る患者さんはもう手立てがない状態で来ることがとても多いそうです。
これが当初から中医治療も加えていたら結果はもっと良い物になったのではないかと話されました。

*先日『中医オンコロジー』という本をみていました
そこに担癌という言葉が書かれていました。“癌を担う”という言葉、それは癌を消す事を考えるのでなく身体を守りながらうまく共存していくという意味だと感じました
目障りなもの・自分に害を及ぼすものがあれば全力で排除しようとしがちですが、それに持てる力全てをかたむけて力を使い果たしてしまっては何にもなりません
中医の扶正祛邪の考え方を持っておきたいものです

体質改善と発がん予防における中成薬の応用
体質には先天的に持っているものと後天的に得たものが
中医学では陰陽五行・気血津液さらに寒熱や痰湿瘀血などからみる

中医学において癌になりやすいタイプは?
気血陰陽の失調
痰・瘀血・熱毒の形成

熱毒(邪毒)形成するもの・・・タバコ・ウイルス感染・カビの生えた食べ物・産業廃棄物など化学物質
邪毒の影響を受けない為には正気を養っておく
*人の身体には癌化しない為の仕組み(癌抑制遺伝子など)がそなわっている
中医学的にはそれも正気の一つと考えられる

*私達を取り巻く環境は決して良いとはいえません
汚れた空気・添加物・細菌・ウイルス・放射能・電磁波その他色々心配しだしたらきりがないので、何も食べられなくなってしまうかもしれないし、厚いマスク無しに暮らせなくなるかもしれません
しかし幸いなことに恒常性を保とうとする力が備わっています
その適応能力も正気のおかげといえます
こういう環境に暮らしているからこそ自分の状態は何が不足しているのか?気滞・痰湿・瘀血が形成されてないか?自分をしり、未病のうちにアプローチしていく事が大切だと考えます