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2019-12-02

令和元年11月 中医学勉強会

常見病{子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症} 中医学講師 高橋楊子先生 (証の診方・治し方)など著書多数)

この3つの疾患のいずれかを持つ女性は多く月経痛や月経過多またそれに伴う貧血更に不妊症につながる事もあり、日常生活や仕事に影響する事も多々あります

子宮筋腫は20~40歳の時に好発する良性の腫瘍で女性ホルモンと関係していて閉経後は大きくなることはありません
月経痛や出血過多で貧血になる事も多い
しかしまれに悪性になる事があるので注意は必要です

子宮内膜症は子宮の内膜組織が腹膜、卵巣、ダグラス窩や他臓器に発生し、女性ホルモンの影響で増殖剥離を繰り返し癒着していく病気で強い月経痛を伴う事が多く不妊の原因にもなる
年齢は10代後半から40代で、晩婚や出産歴のない人に多くみられる

子宮腺筋症は子宮内膜に類似する組織が子宮筋層内に増殖し子宮が腫れて大きくなる病気で30代後半から40代に多く月経過多で貧血を伴う事が多い

これらの疾病を重なって持っている人もいます

中医学の考え方・・・瘀血との関係が強い
冷えによる血滞、ストレスによる気滞血瘀・脾胃気虚や飲食の不節により内生した痰湿による瘀血から気血臓腑が虚損しさらに気虚や腎虚から瘀血となります
痰瘀阻滞が気血臓腑の虚損をもたらし気血臓腑の虚からに痰湿・瘀血を生じるという結果になります

古典をひもといても『人の腹内に塊ができる原因を飲食の不節制・寒温の不調和・気血の消耗・臓腑の虚弱などにより風冷がお腹に入って瘀血となる』といっています

そこから考えると以下の事は予防の為(瘀血を作らない為)に大切です
①月経中に冷たいものを飲んだり食べたりしない
②ひざ下・内くるぶしは三里・三陰交という大事な坪があるので冷やさないようにする
③甘い物・脂っこいものを避けて痰湿を作らないようにする
④生活リズムを整え夜更かしや徹夜をしない

月経痛
1、虚実の弁証
実証 不通則痛(通じざれば則ち痛む)・・・強い痛み
病因 情志失調→気滞血瘀
痰湿蘊結→痰瘀阻滞
寒湿侵入→寒凝血瘀
虚証 不栄則痛(養わざれば則ち痛む)・・・鈍い痛み
病因 先天不足
腎・脾・肝の虚損、気血虚弱
後天失調
虚実挟雑・・・虚実が同時に存在する
*例えば気血不足で寒凝血瘀も兼ねるとか
*虚実の見分けは痛みの状態・血塊の有無・経血の量や色・全身状態などからみわけます

2、寒熱の弁証
月経周期・痛みの状態・経血の色や状態
顔色・表情・精神状態・全身状態
以上から寒か熱かを見分けます

よく使われる方剤や中成薬や中薬
①気滞血瘀 逍遥散・冠元顆粒・芎帰調血飲第一加減・血府逐瘀湯・水快宝
②寒凝血瘀 桂枝茯苓丸・爽月宝・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・田七
③痰瘀阻滞 シベリア霊芝 + 冠元顆粒・水快宝・桂枝茯苓丸加薏苡仁
*婦人科の名医 夏桂成先生が子宮腺筋症や筋腫に使っている処方は化痰軟堅・活血化瘀の働きのある消瘤丸には桃仁・莪朮・水蛭などは活血化瘀や破血に・昆布・海藻は消痰散結に、夏枯草は清熱散結などが配合されています

瘀血に対応する方剤は瘀血の度合いによって違います
重度の瘀血は乾血・死血などと言われ水蛭などの破血の働きのものが必要になります

まずは瘀血を作らないようにして、酷くしないうちに活血の働きのある漢方を使うようにすると良いと思います

2018-12-02

平成30年11月18日 中医学勉強会

『食養生』                                                                      中医学講師 劉桂平先生

食養生の重要性
 ①人は食によって生命が維持されるので食養生は重要。
 ②病気の原因を考えるに食が関係することも多い。
 ③病気の原因は個々の違い・気候や時間などを考慮・地域性などを考える必要がある。
 ⇓
  日本人の体質(農耕民族だった事など)
  日本の気候風土(四季の変化・冬の乾燥・高温多湿な夏)
   → 疾病の時期を考慮

中医学で疾病は邪気によっておこると考えています。
外界から入ってくる邪気(風・寒・湿・熱・燥・暑)六淫といいます。
他に内生の邪気(瘀血・痰湿)などがあります。
正気が邪気に勝てば疾病は生じません。
例えばこの夏は猛暑でした。
夏ごろから体調を崩していれば、暑邪の性質を考慮します。
暑は炎熱ですから、炎症・興奮・紅い・腫れるその結果として乾燥、さらに陰虚になるなど・・・時に発汗や消耗による気の消耗から陽虚になる場合も
また暑は湿を絡めてくるので脾胃の損傷・胃腸炎・しつこい皮膚炎など
炎熱も結果として乾くという事がおこり、湿による下痢から潤い不足がおき、秋の気は燥であることから津液不足・陰虚傾向が更に進む事など考える必要があります。

治病求本・・・病を治そうと思うなら本質(原因)考えるという事・・・食養生
       体質改善には胃気(食欲が大切)
       健脾益胃(脾胃の働きをよくする事は食養生につながる
     *中医学の食養生は栄養学的観点でなく脾胃(胃腸)を補助する事を考える
      吸収と排泄は重要!
     *自然の摂理に従う・・・旬のものを摂り腹八分
     *中医学の考え方・・・「食治則身治」(食生活が良くなれば身体は治る)
                「安身之本、必資於食」

中医学は西洋医学のように深く部分を診る医学ではありません。
全体観といい身体全体をみるばかりでなく気候など環境因子も含めて全体を考え、人が備えている恒常性を維持しようとする力、治癒力を回復させようとするものです。
人の身体は生まれつき与えられた成長すると力(先天の精)飲食物の摂り込みによって滋養され、エネルギーもできる(後天の精)と呼吸による清気のとりこみによって維持されています。
だから、身体に必要な飲食物を必要なだけ必要な形で摂取する事、それを摂り込む機能である脾胃が健全である事は治癒力と深い関係があるという事です。

昔から言われる病気と食事の関係
  脂っこいものを摂る、美食しすぎるとおできなどの出来物ができる
  食べ過ぎは胃腸を損傷する
  飲食の不摂生は百病に通じる
中医学による良い飲食とは
  淡味・・薄味
  節食・・節度ある食事
  腸をきれいに!「欲得長生、腸中常清」
ひかえた方が良い食べ物
  甘いもの(チョコレート・ケーキなど)
  脂っこいものや脂の多い肉(天ぷら・とんかつなど)
  辛いもの
  洋食・加工食品
  高たんぱくのものの摂りすぎ
  生ものや冷たい物
  コーヒー・アルコール
  タバコ
養生生活
  心を穏やかにし、和食中心で腹八分
  季節の野菜に火を通してたっぷり食べる
  バランス良くたべる
  適度な運動(適度に汗をだす)
  朝日や木漏れ日などやさしい日光をあびる
  生活リズムをまもる(食事・睡眠)
  白湯・緑茶・紅茶を飲む
脾胃をまもる漢方薬・・・衛益顆粒・健胃顆粒・健脾散・心脾顆粒他 
脾胃をまもる漢方食品・・・晶三仙・五行草茶・シベリア霊芝
腹八分の目安
 1、胃の膨張感がない。苦しくない。
 2、身体が重くならない
 3、食後眠くならない。

食養生
  胃気保護
  原因の除去・・・漢方薬や漢方食品の効きがよくなる
  体質改善・・・食養生と漢方で改善
 *情報の多くあれもこれもとなりがちです。
  自分にあった方法を知ることが大事。

*病気は邪気によると書きましたが、内生の邪気は瘀血・痰湿です。
これらはほとんど生活や飲食の不摂生からできるといっても過言でありません。
飲食物から得られ水穀の清微から気血精がつくられますが、作る能力以上に食してしまっては痰湿・瘀血を作っているようなものです。
瘀血は万病の素といいます。
養生生活で身体をいらわりましょう。

2018-11-04

平成30年10月21日 中医学勉強会

『問診のすすめ~婦人病~』                                                              中医学講師 邱紅梅先生

著書:問診のすすめ・わかる中医学入

5月に引き続き先生の著書『問診のすすめ』の現代医学を用いた問診の項より婦人病について講義していただきました。

不孕(不妊症の中医学用語で不育を含む)着床力 

①内膜の厚さと質をどうみるか?

 内膜は厚みと柔らかさがあるほうが着床しやすい。

 経血量は内膜の厚さとも関係している。

女性の生理機能を血の道といいます。
血の濡養作用は月経・妊娠・出産などにおいて重要です。
卵子も濡養作用によって成長します。
しかし血は気の推動力によって働く事ができるので気血という言い方をします。
“血とは脈管内の赤い液体であり、主に水穀の精微から化生されてできる”
となっています。
ですから月経が少ない事は血の不足(血虚)とみます。
『肝は血を蔵す』『心は血脈を主る』肝血虚・心血虚が関係します。
また肝腎同源・精血同源といい、『腎は生殖を主る』ので関係します。

 内膜が薄いのは 肝血虚・心血虚・腎精不足・腎陽虚・気血両虚などの可能性があります。

血虚・腎精不足は材料不足ととらえ、腎陽虚は転化するエネルギー不足と考えます。
また気血不足は脾の血をつくる力の不足により血の不足となります。

②内膜の硬さをどう考えるか?

中学的見方・・・瘀血が関係する
子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫・子宮腺筋症・卵管・子宮腔の癒着など
・月経痛が酷い・血塊
・排卵痛・性交痛・排便痛
・経血量は過多
瘀血は原因から色々なタイプがあるが気滞血瘀・寒凝血瘀が多いと感じています。
気滞血瘀はストレスと関係していますが、特にストレスは無いと言う人でも、几帳面だったりすると、そうでない状態が気になっていたり、また面倒見のいいひとやよく気が付く人なども気を使いすぎている場合の気滞血瘀もよくみられます。
寒凝血瘀も多く、薄着やよく冷たいものや生ものを摂るなどによる血瘀もよく見られます。せめて月経中は冷やさないようにして冷たい物は避けるようにしましょう。

③内膜の感受性

内膜の厚みは15mm以上あって、グレードの高い受精卵を胚移植しても着床しない場合は着床力の低い状態といわれるが、邱先生の経験則からいってほとんどが瘀血だそうです。
なるほどという感じです。どんなに気血が充実していても、腎精が充足していても運ぶルートが閉塞していては何にもなりません。
瘀血は万病のもとといいますが、全くだと感じます。

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