梅雨と漢方

パンダ⑧ 今年は梅雨に入るのがはやかったですね。5月は五月晴れといえる日も少なく、なんだかズーッと梅雨だったような感じです。梅雨のイメージは雨・暗い・湿気が多い・蒸し暑い・かびやすい・腐り易い・食中毒とあまりよくありません。この湿気の多い季節は身体にも影響します。特に体の中に湿の多いタイプはより影響をうけます。

 湿は粘膩で重濁の性質があります。つまり、粘ってしつこく、重く濁って汚く細菌やかびが繁殖し易い、ってことです。身体が重だるい・食欲がない・軟便や下痢っぽい・気持ち悪い・関節が痛い・頭が重い・痰がからむなどはこの時期におきやすい症状です。また、風邪や咳がいつまでも治りにくいのも湿が影響していることが多くみられます。

 この季節になると思うのですが、それほど気温が高くなくても湿度が高いと蒸し暑さを感じる事があると思いませんか?身体は半水中にいる状態で湿気で冷やされています。なのに何だか冷たくさっぱり咽ごしのいいものが食べたくなりませんか?冷やし中華・つけそば・つけうどん・ビール・プリン・ゼリー・・・そうするとお腹も冷えて体調がわるくなります。

 湿は陰邪です。体内に停滞し気機を阻滞する時は軽く発散させましょう。その為、温かいものを食べて軽く発汗する方が身体がさっぱりします。又この時期、紫蘇がのびてきていますが、紫蘇は軽く発散して停滞した気機を巡らす最適の食べ物ですので食事にとり入れていきましょう。漢方薬では勝湿顆粒・平胃散など身体が重だるいときなど服用してみましょう。

 梅雨の気温が高めで湿度が多い状態は食中毒をおこす細菌やかびが繁殖しやすいので要注意です。手洗いや調理器具の除菌など基本的な事は守りましょう。私はこんな事に気をつけています。作ったものは悪くなり易い季節ですのでなるべく早めに食べ、時間があいたときは食べる前に加熱します。サラダなど火を使わずに料理したものはその場で食べます。通常の生活の中で私達は細菌と共存しています。常在している細菌に対して抵抗力を持っています。でも増え過ぎたら対抗しきれません。増やさぬ工夫が大事です。特に普段から胃腸の働きが弱い脾胃気虚の人は抵抗力がないので注意しましょう。

 急性の下痢・腹痛などになった時は勝湿顆粒をすすめる事が多いです。理由は勝湿顆粒が外感(邪気が外から入ってくる)時に使うお腹の薬だからです。去邪+理気健脾の働きがありますが、痛みが強い、舌苔が黄色いなどの時は五行草茶を併用します。

 更に下痢が酷い時は胃苓湯(フラーリンA)を併用します。また、脱水ぎみにならないようにイオン飲料を飲みこまめに水分補給しましょう。この時、冷たくしないで飲んでください。また、下痢とともに気も出ていってしまい疲れやすくなってる時は気も陰(血や精や津液)も補える麦味参顆粒が最適で、胃腸も元気になります。

 また、神経痛や腰や関節の痛みがでたり、痛みが酷くなったりする方が多い時期でもあります。湿気や冷えの影響が大きいです。中医学では身体が虚になっている為、風寒湿熱の邪気が経絡に侵入する事によって気血の流れが阻害され痛みが出ると考えています。不通則痛(通じざれば、すなわち痛む)です。治療法は虚を補い、邪気を追い出し、気血の巡りを改善するというものです。

 虚を補い、邪気を追い出す組み合わせになってる方剤に独活寄生湯(独歩丸)疎経活血湯があります。独歩丸は補気血+補肝腎の働きが、疎経活血湯は補気血の働きがあります。湿を中心に考える時に気虚によって水はけが悪くなって浮腫んだり、膝関節に水がたまったりするときは黄耆の利水消腫(水をさばいて腫れをとる)働きを利用します。方剤は防已黄耆湯です。

 また、食用蟻の食品がでています。

中医学で蟻は補腎壮骨(腎を補い骨を丈夫にする)
養肝栄筋(肝を養い筋を栄養する)
去風湿・止痛(風湿の邪気を追い出し痛みを止める)
活血化鵞(血の巡りの改善)

の働きがあるものとして使われています。また強壮剤としてもつかわれます。世界には蟻を常食している人達がいますが、腰や関節が弱い方は毎日少しずつ食して丈夫になりましょう。