舌の話

パンダ③ 人は見かけによらぬものとか、見た目で判断しちゃいけないとかいいますが、中医学(漢方)はというといって見た目を判断の材料にします。これを望診といいます。望診の中でも重要なのは舌診といって舌の状態で判断する事です。舌は食道・胃・・・・というように内臓につながっている、つまり身体の中のような外のような部分です。私達が見れる身体の内側ともいえます。だから身体の中の事を現しています。健康のバロメーターですので毎朝鏡にむかってベーして見て下さい。見方を今週は書いて行きます。

 舌の図表が置いてあるので、舌を出してどこがわるいですか?と聞かれる方がいますが、舌で何の病気かわかるわけではありません。図表の上に書いてあるように寒熱・血・水の状態をみます。また正気の盛衰を判断したり、病気の深さを見ます。寒熱というのは病気の性質ですが、燥湿も見れます。また、病状がよくなってきているかなどを推測できます。毎朝舌の健康チェックしています。それがくせになっていてテレビでベーっと舌を出した人を見て「ずいぶん血虚だね」などと話したりします。

 舌の色・大きさ・形・硬さ・湿ってる状態などを見たり、舌苔の有無、付き方・厚さ・色・湿ってるか乾いてるかなどを見ます。舌の色が紅ければ熱です。実熱も虚熱もあります。

 次は実熱の例です。子供が高校生の時インフルエンザが流行していて、「すごく咽が痛い、熱っぽい」といって学校から帰ってきました。熱はまだ微熱程度ですが舌を見るとイチゴ舌(舌の先全体が赤くぶつぶつ状態)でした。外感風熱で熱毒が強いと思ったので天津感冒片と板藍茶を飲ませました。2時間後くらいには39度をこえました。時間をみながらその組み合わせで余分に飲ませました。

 戦う相手の勢力に対抗しなければ勝てません。夜遅く40度になったので解熱剤を一回のませました。翌日は同じようにして漢方薬を飲ませました。お昼頃咳がでだしたので天津感冒片・喘咳散(麻杏甘石湯加減)・板藍茶にしました。夕方まだ39度近くありましたが、舌をみると赤いぶつぶつがなくなってきていたので、もう大丈夫と思いました。それからどんどん熱が下がりました。舌の紅は熱を現す色です。赤いぶつぶつは熱が盛んな印です。

 四月頃 娘が

「胃が痛い」
「ベーは?」
「ベー」
「やっぱり冷えだ。びしょびしょした舌(滑苔)になってよ。それに胃が痛いっていってかがみこんでたでしょ。寒邪は収引といって縮めるからだよ。」
実は「アイスを2回食べた。」
「やっぱり。暑くもないのに!安中散を飲んでおけばいいと思うよ」
「ラジャー!」

 湿潤のつよい時は冷えです。冷えが酷いと苔は真っ白で舌が青っぽくなります。冷えて循環が悪くなっている印です。プールとかで寒くて唇が紫になるのと同じです。寒邪は凝滞の性質もあり、血行を停滞させます。

 舌が痛い、舌がしみる、口内炎ができやすい。これらは心火によることが多いようです。舌の先からは心や肺の情報をみることができます。風邪で熱っぽかったり、喘息だったりして舌先が赤い時は肺熱、眠りがうまくいってなかったり、いろいろくよくよして落着かなかったりの時は心火です。

 舌の両辺が赤い時は肝火です。心肝の火がつよけいとイライラ、おこりっぽい、おちつかない、不眠など神経の興奮の症状となって現れます。治療はこの火を抑えなくてはいけません。実火は瀉火します。水や氷をかけ冷やしてけすようなやりかたです。では虚火は?そもそも虚火ってなに?陰陽のバランスの崩れによる火の事、つまり身体の弱りによって出る炎症や熱や興奮などをいいます。