夏と心

パンダ⑧ 心は五行の火の臓で、その季は「夏」です。夏は心の働きが活発になる季節です。心は『血脈を主る』『神志を主る』ので血行がよくなり、人々は物事に対して明るく積極的で、海に山にと遊ぶ計画をたてたりします。でも、心の弱い人はオーバーヒートしやすく、少し動くとハーハー・ドキドキして、心の液である汗は出過ぎて体力も弱まり、眠りも浅くなります。暑い環境下で身体に熱がこもりひきおこされるのが熱中症です。汗は体温調節をしていますが、大量の汗で脱水をひきおこし体温調節ができず熱が体内にこもってしまいます。梅雨明け、急激に暑くなった時は、身体も暑さに対して調整する準備ができていないので要注意です。必ずイオン飲料か塩を少し溶かした水をちょくちょく飲むように心がけましょう。

 中医学てきには身体が脱水ぎみでヘトヘトな状態を気も陰も不足している状態(気陰両虚)といいます。身体の中の水は津液です。暑熱による発汗が過多になったため傷津(中医学では津液が失われ、役目を果たせない状態になっているのをこう呼びます)がおこり、津液とともに気も外泄(外に出ていってしまう事)するので気津両傷が発生する。そうすると倦怠無力・息切れ・咽の渇き・口の乾燥(粘った感じがする時もあります。)等の症状があらわれます。簡単にいうと身体がヘトヘトで咽が渇ききってる状態です。気津両傷を治す漢方薬が生脈散(麦味参顆粒)です。働きは益気生津(気を益し、津を生じさせる)斂陰止汗(ひきしめて汗のかき過ぎを抑える)というものです。漢方ってよく考えられてますよね。漢方は病気でなく身体の方を治すものです。

 「渇して水を飲まんと欲し、口舌乾燥するは 白虎加人参湯これを主る」

 身体が熱く、咽の渇きが冷たい水を沢山飲み、疲労感も強い時は白虎加人参湯がいいです。これの働きは、清熱生津・益気(熱をさまして、津液を生じ、気をます)です。熱証が強いときはこちらを服用するといいです。人の身体は正直です。内側に熱があれば冷たい物を欲し、冷えがあれば温かいものを欲します。これは寒熱をみる指標になります。

 中医学で心は「しんぞう」と「こころ」です。

 これは「血脈を主る」と「神を主る」という言葉で表されています。夏、こころもオーバーヒートすると眠りにも障害がでてきます。疲れているに眠れない、眠りが浅い、そのため昼間も眠いなど。夏ばてで眠りがわるくなっている時は麦味参に酸棗仁湯錠・帰脾錠・補心丹・牛黄清心丸などを状態に合わせて使ってみてください。そういえば英語もハートは2つの意味がありますね。精神的なショックでドキドキしたり、こころとしんぞうのつながりの深さは誰でも感じる事なのかもしれません。

 「夏に脳梗塞が多い」と言う事がいわれています。中医学的に暑邪は心陰・心気を損ない易く、又「心は血脈を主る」ので血脈も停滞し易いのです。つまり中医理論から言えば、養生しなければ“起こるべくして起こる”ということになります。暑邪の事をよく知り・個々の持てる力に応じて滋陰・生津・益気・健脾・化痰・化湿・利水・安神、さらに血脈が滞れば活血などの働きのものを食し・漢方を服用するなどして心を助けましょう。

 汗は心の液というけれど、汗は邪気を追い出したり、鬱滞した気を出したりするのでいい汗かく事は大事です。汗して仕事や運動をしたあとシャワーをあびて、気持いいと感じるのがいい汗です。でも心の弱い人は注意しましょう。食欲がなく、水っぽいものばかり食べたり飲んだりして、身体に暑さがこもってクーラーをガンガンかけずにいられない。また身体がだるく疲れがとれない。こんな症状は放っておかないで相談してください。