中高年と病気

2007-05-01

パンダ① 今週も中医臨床からの話で、長年、中医学の糖尿病治療にあたってきた老中医考え方についてです。糖尿病の初期は喉の渇きが酷く、飲む量も多く尿量の多いので 漢方でいう消渇病として考えられていました。消渇病の弁証と現代医学の検査を組み合わせ弁証・弁病の2方向からアプローチします。糖尿病の病因として 『飲酒 脂っこい食事を好む 精神的過度の緊張の3つ』で、もともと体質に陰虚傾向がある。また臨床経験から2型糖尿病の人のほとんどに『気虚』の症状がみられる。その為、瘀血は気虚から生ずるとして基本的な弁証を気陰両傷・脾腎倶虧・脈絡瘀阻、基本的な治療方法を益気養陰、培補脾腎、活血化瘀としています。

 この先生は糖尿病の弁証を5つに分類しています。気陰両虚・陰虚火旺・燥熱入血・陰陽倶虚・瘀血阻絡となっています。糖尿病の人は本質的に陰虚の体質をもっているという考えにそってそれぞれの弁証に合わせた治療に加え滋陰・養陰・育陰など陰虚にたいする配慮がなされています。体質的に火を生じやすいタイプは本質に陰虚の傾向があるのかもしれません。飲食の不摂生やストレスによって肝血・肝陰が不足すると益々陰虚傾向がつよまるのもうなずけます。現代はグルメといって豊かな食生活をおくる人も多い時代です。少し前の時代の過食とはわけが違うと思います。そんな中で『食を制するものが成人病を制するといっても過言でない』気がします。

 中医学における糖尿病研究たずさわっているトン先生は、一昨年来日した時、現代において病因は食積が大きいと話されました。血糖値が異常な人は一昔前にくらべると増加傾向にありますが、老中医の示した基本的な体質以外の人も飽食から血糖値の上昇になってきています。中医学において飲食の不摂生によってたまったものは食積(食によって積もったもの)といいます。これを取り除くのに食積を消して 停滞したものを導いて排除するという方法(消食導滞)という方法があります。その為に用いられるのが消導薬といわれるものです。山楂子・麦芽・神麹などがそれにあたります。消化を助ける食品といわれる晶三仙はこれらが使われています。現代の糖尿病にはこれも必要なものの1つです。

2007-05-01

 認知症には脳血管型とアルツハイマー型があります。最近では脳血管型もアルツハイマーを伴うことが多いといわれています。
中医学で考えると認知症は『心』『腎』と関係しています。『心主血脈』心は血脈を主っているので循環とかかわっているばかりでなく、『心蔵神』心は神(思考する力=大脳をとりまく機能)を蔵し、思考とかかわっています。『腎主骨、腎生髄』腎は骨を主り、髄を生じ、髄海(脳)に通じるといっています。腎虚になって髄を生じることができなくなってくると髄海が満たされなくなります。

中医理論は昔から受け継がれた理論ですが・・・
老化・・・腎虚
脳の萎縮・・・髄海が満たされない
補腎はとても大切です。

 特に脳循環は大事な要素です。脳に酸素や栄養を運び、老廃物を回収してくる通路がせまくなっていたり、それを運ぶ流れに不用物がたくさん流れていたりしたらどうでしょう。流れが悪くなるばかりでなく、細いところは詰まりやすくなります。つまって流れが行かないということは酸素も栄養も運ばれず、老廃物も除去できない状態ですから、その部分は壊死してしまいます。また酸素や栄養不足なら養われない為衰えます。また赤血球などを形を変化させてうまく流れていきますが変化するという動きのには気というエネルギーが必要です。

 痰湿と瘀血はいろいろな病気にかかわっています。そしてこうなる原因の1番は食の不節制です。食によって水液代謝の副産物である痰がつくられ、気血の通りを悪くして瘀血になります。食は不足も気血不足になってよくないですが、過ぎたるは及ばざるより尚悪しともいえます。わたしの子供の頃はケーキは誕生日など特別な日にしかたべませんでした。ケーキ屋さんができたのも小学校中学年の頃でした。料理は煮る、蒸す、焼くが多く、生クリームを使った料理などありませんでした。

ところが現代
「ケーキは週何回たべますか?」
「生クリームをつかったこってりした味が大好きですか?」
「とんかつ・から揚げ・エビフライなど揚げ物は週何回?」
・・・おいしいですよね。
・・・本当はケーキ大好き
・・・でもヤバイ!! 痰と瘀血

 食養生は循環が悪いためになる病気の予防の為にとても重要です。脳循環を考える時、中医理論から『気滞血瘀』があります。
気が巡らないと血が巡らないという理論です。しかし逆もあります。瘀血により気の巡りも悪くなるということです。こころが穏やかでのびのびして柔軟であれば気は停滞しにくく、血も停滞しにくいといえます。また、身体をよく動かすことは血が巡るので、気も巡ってくることにつながります。笑うと免疫力があがるといわれていますが、良い笑いは気も血もめぐります。

 方剤選びの基本は活血化瘀薬+補腎薬です。補腎薬選びは益精血の働きが充分なものがよく、例えば参茸補腎丸や双料参茸丸、海馬補腎丸などがそれにあたります。活血化お薬は心血管系によく使われるものがよいようです。冠元顆粒、血府逐瘀丸など・・・痰湿のあるタイプは釣藤散や温胆湯などを加えるとよいと思います。補腎 活血は基本として症状や体質にあわせたものを使っていくのがよく、香ロゼアやシベリア人参茶などの漢方茶も常飲しましょう。

 もちろん身体と五感を働かせることで脳を活性化することはとても大事なことです。楽しく或いはやる気をもってすることが大事です。それがストレスになってしまってはいけません。適度なストレスは身体を元気にしますが、過度なストレスは気を鬱滞させてしまいます。ストレスの領域は人によってちがうので「この位のことはやりなさいよ」と押し付けないほうがいいと思います。やる気になっているときはストレスと感じにくいものです。

2006-10-01

 昨日は埼玉中医薬研究会で「腎炎と腎」について、中医臨床の弁証論治トレーニングのコメントを書いていらっしゃる高橋先生を講師に招き勉強しました。毎年、腎臓の病気の悪化から慢性腎不全となり、進行して腎臓が機能しなくなると人工透析を行うようになります。

 腎臓病の原因には腎炎や腎盂炎またIgA腎症など腎臓疾患による場合と糖尿病や高血圧などの原因で2次的に腎臓病になる場合とがあります。中医学の未病を治す学問なので、できれば腎不全にならないように、また、自分の腎臓が少しでも長持ちするようにという点でとても助けになると思います。

 腎臓は血液の濾過装置です。

 腎臓に集まった血液を濾過し源尿(小水の素)をつくり尿細管という管を通る間に必要なものを再吸収し膀胱へ運びます。腎臓の病気はこの尿を作る仕組みがうまくいかなくなるものです。必要なタンパクや血液が尿中に漏れ出したり、尿が少なくなったり、浮腫んだりします。

 中医学でこの腎臓の仕組みを考えると「肺」「脾」「腎」の3臓が関っています。また、瘀血、痰濁を考えにいれなくてはなりません。尿の生成と関係する腎臓の病気になると浮腫みがでます。中医学で浮腫みは肺・脾・腎の3臓と関係しています。「肺は水道を通調する」「脾は水液の運化を主る」「腎は水液をつかさどる」などといいます。急性腎炎などで浮腫が生じる時は瞼・顔など上のほうから浮腫んできます。風邪などの外邪の侵襲により肺の働きが阻害されたからです。脾の運化が失調した時は四肢の浮腫みがでます。腎の働きの失調は下半身にでます。

 近年、腎臓の病気の治療に瘀血を考慮することが重要視されてきています。中医臨床2004年12月号に中医腎疾患の権威・陳以平教授の研究の特集がくまれていました。その中に腎臓の病気における瘀血の形成の事が以下のように書かれています。

 腎糸球体は

1.毛細血管網によって形成されている
2.レニンの分泌や糸球体血流量などの調節機能をもっている
3.非常に微細な血管

 腎疾患が発生すると血流抵抗の増大・血流速度の低下により血液粘度が増す。

 中医学でこの状況は

脾腎両虚による水湿停聚→スムーズな気血の運行失調→瘀血(腎臓が瘀阻絡傷)

 瘀阻絡傷とは微小循環が瘀血の停滞で傷つけられるという意味です。陳先生は活血化瘀通絡の為にどんな中薬をつかっているのでしょうか。丹参・大黄・益母草・沢蘭・当帰・川きゅう・紅花・赤芍・桃仁・田七・牛膝・水蛭などが使われているようです。証の弁証に加えて活血化お・破血・通絡を組み合わせて出してあるようです。

 証型を7つに分類してあります。

1、気虚血瘀
2、陽虚寒凝
3、陰虚熱瘀
4、気陰両虚
5、湿熱血瘀
6、水湿血瘀
7、湿濁血瘀

 中医学のよくわからない人でも腎臓病の7つの分類に湿という字が3つも出てくるので水との関りをつよく感じると思います。

 腎臓はとても重要な臓器です。

 浮腫みは脾・肺・腎の3臓から考えるのは前に書きました。尿タンパクは必要なものがでていってしまうということで気の固摂機能の失調が大きな原因になります。黄耆の大量に使う事が多いのは黄耆の益気固摂の働きを期待するものです。方剤で運用するときは補中益気丸+衛益顆粒とか補気と固摂を強めるのがいいと思います。ただ、弁証が一番ですので弁証無くしてなにもつかえませんがこういったやり方で効果を上げています。

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