皮膚と病気

2007-01-01

 ここ数日 はちみつ・オリーブ油・塩をよく混ぜてお風呂でマッサージしています。えっ!私でなく娘。

「いっこうさんのマッサージ最高!お肌がつやつや!」

 お風呂上りのを見るとおでこもほっペもツルツルです。ところが今朝

「自分の肌がやだ!」

 といっているので見るときれいな肌です。ただ毛穴が開いて見えるのを気にしているようです。若い子は贅沢ですね。

「毛穴が開いて見えたり、下がって広がって見えたりは気の働きが弱いからだよ。しっかり引き締めとく力を補っておくといいんじゃないの。睡眠不足しないようにね」

「寝不足で目の下が隈になってるし、お化粧ののりも悪いわ」

「忙しくて食事が不規則で、胃腸も肌の調子もわるいんです。」

「冷え性なんです。冬はつらくて・・顔色のくすんで、肌もカサカサ。」

 等々 体調と肌の関係は感じている方も多いと思います。潤いや張りがあり艶やかな肌色の肌は女性の希望です。生活リズムや食事の養生を心がけ、五臓のバランスや気血津液を整えておきましょう。

 血虚タイプは肌が養われずカサカサします。血が肌を滋潤するからです。当帰は『補五臓生肌肉』五臓を補い肌肉を生むとなっています。特に冬は肌が乾燥し易く冷えて血行も悪くなって顔色もくすみがちです。だから補血活血の当帰のシロップ(婦宝当帰膠)はお薦めです。またサージオイルのカプセル(紅沙棘)も潤いのあるお肌にいい食品です。

 「肝は血を蔵す」ですが、肝の気は風です。肝血虚によって風がおきることを「血虚生風」といい血の不足によってふらつき・めまい・しびれなどがおきます。血虚によって皮膚が滋養できず乾燥し、風によって痒みがおきる事を血燥生風といい当帰飲子が適用です。当帰・白芍・生地黄・何首烏で陰血を養って、肝の働きを調整して風を消す組み合わせになっています。皮膚の赤みや熱感がある時は風熱を除く板藍茶や天津感冒片を併用するといいようです。

「チョコレートを食べ過ぎると吹き出物ができちゃうよ。」
「便秘がつづいてもできるよ。 」
「この頃食欲なくて食べてもすぐもたれるんだけど肌がカサカサ。」

 など胃腸と肌も関係がありそうです。脾胃は気血生化の源(気血をつくる源)です。胃は「腐熟を主る」 「通降を主る」といい飲食物をこなして次に下に降ろす働きがあります。小腸は「清濁の必別を主る」といい分別するところです。清とは体内に取り入れられて気血のもとになる精微物質で濁とはその他の糟の方です。大腸は「糟粕の伝化を主る」といって水分を吸収して糞便を形成し肛門へ送ります。精微物質の取り込みが悪ければ気血が不足し肌にも栄養できません。また、食べ過ぎなどによって濁が降りなかったり、取り込まれたりすると肌トラブルもでてきます。

 お肌の潤いには血と津液が、張りには気が重要! 肌は内臓の鏡というように五臓が元気な事が大事です。特に脾は肌肉を主り、肺は皮毛を主るといわれることからも関りの深い事がわかります。

 美しいお肌のためには、夜の10時~2時はゴールデンタイムとかいって寝ていた方よいそうです。中医学的には陰が深く極まった時間帯ですので、睡眠によっておおいに陰を養える時間帯です。早寝早起きは三文の得。ここにも得がありそうです。肌の調子も養生しだいと言う事ですね。

2007-01-01

 アトピーでお困りの方も多いと思います。私の子供の頃は周りにアトピー性皮膚炎の人はいなかったと思います。アレルギー体質の人が増えているように見えます。昔と今と何がちがうのでしょう?よく言われていることかもしれないけど新ためて考えてみましょう。

①食事をはじめとする食べ物の質・量(脾は大丈夫?)
②寝不足など生活のリズムの不摂生(五臓のバランス・瘀血)
③外的ストレス
 テレビ・音など目や耳(肝・腎)はつかれていませんか?
 身体を動かしてストレスを発散できていますか?
④冷房や暖房で快適生活ですが、環境に適応する力が弱っていませんか?(衛気虚)

 15年くらい前(1990年頃)ですが、中医師の方が中国にはアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など、あまりないという事を言っていました。・・・現在はちがっていますが・・・

 以前は食用油は配給で貴重品だったそうで、食卓には野菜など、茹でたものが多かったのだとか。また、日本に来て、冷蔵庫から出した冷えた牛乳などをのんでいたらアレルギー性鼻炎がでてきたとも話していました。この事から脾とアレルギーは関係が深そうだと言う事が想像できます。脾は後天で円滑な働きで腎の先天を補助します。

 アトピーの方の皮膚はカサカサしています。皮膚の表面の皮脂膜がなく表皮は荒れています。また炎症をくりかえす事によって厚くなっていることもあります。「皮膚科でアトピーと診断されました。」といっても症状はいろいろです。紅くなる・ブツブツが出きる・ジュクジュクする・白く粉が吹いた様になる・カサカサが落ちる・・・軽いタイプから全身症状のある重いタイプもであります。体質を改善するには五臓の状態を把握する必要があります。これは殆ど虚を補うという作業です。

 しかし炎症は火と考えるので 瀉火や清熱利湿など、症状も抑えていく方法も必要です。症状に対応(標治)と体質に対応(本治)・両方大切です。

 アトピー性皮膚炎の我慢できない症状に痒みがあります。痛みよりつらいと言われる痒みですが、中医漢方では風・熱・湿によると考えます。『熱にあえば則痒く、寒にあえば則痛し』と書物にあります。しかし、寒冷蕁麻疹のように寒いとなるものもありますが痒みは熱によるものに比べると軽いです。臨床的には血熱・血虚燥風・風熱・熱毒・風湿熱毒などの場合があります。また患部の赤みは熱を現す色です。鮮やかな紅なら熱が血分に及んでいる血熱と考えます。熱(火)といってもいろいろで風熱・血熱・毒熱・湿熱・虚熱・燥熱などです。

 また、アトピー性皮膚炎の場合、1つでなく湿熱+血熱+熱毒というように組み合わさっている事の方が多いようです。単純ではない上に火の勢いが強ければこちらもそれなりの力で対抗しなくてはなりません。『焼け石に水』ではなんにもならなくなってしまいます。つまり2種類、3種類と使い、冷ますタイプの漢方茶も使って総動員で火を抑えなくては治まってきません。

 この考えは風邪の漢方で風熱の邪気に対抗する時と同じ理屈です。小さい火はコップの水で消せるかもしれませんが、大火は大量の水が必要でしょう。

 アトピーは子供の頃からだったり、酷くはなかったけど皮膚が弱かったり、気管支が弱かったりすることが多いと思います。これは脾・肺・腎の弱さと関係があります。悪化の引き金になるのは思春期・受験・就職などホルモンのバランス・ストレスなどあると思います。同時に食生活(質・量・リズム)や生活全般のリズム(睡眠時間など)も違ってきている事も多いとおもいます。これは肝気横逆といってストレスによって肝が病的な状態になり弱い所を攻撃するという現象とも関りがあります。

 中医学でアトピー性皮膚炎は銀屑病または牛皮癬にあたるようです。中医皮膚科の老中医・張志礼先生の本に次のように書かれています。銀屑病は紅斑鱗屑性皮膚病がよくみられ、経過が緩慢で、再発を繰り返す傾向がある。血熱が主要な病気の根源です。血熱の形成には幾つかの原因があり七情内傷・飲食不節・風熱毒邪を受けた為など ということは清熱涼血薬は必要不可欠ということになります。

 いつも書いていますが、人の身体の営みや病気に対して漢方的な考え方があります。この考えに沿って運用する事が身体を変えるということにつながります。病気の位置を表すのに表裏ということがあります。傷寒論と言う書物中にみられる分類では病邪の位置が太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰の6段階になっています。また温病において病気の段階が衛分・気分・営分・血分に分類されています。血分は病邪の位置は深く血分に入り込んだ状態で重傷です。血熱は熱が血分に及んでいるという事で、その熱は深い所にある事になります。

 血熱を主とした炎症性の症状とカサカサした滋潤力のない症状を改善していくには長い時間が必要です。特に補腎・健脾・養肝・補肺などの本治はじっくり取り組む事が大切です。また、養生は重要で、身体を変化させようと考えているわけですからこれまでと同じで良いわけはありません。

 食事の質と量(ご馳走という意味ではありません。新鮮なもの・栄養バランスのとれたものの事です。量は腹八分です。)食事はゆっくり時間をかけてよく噛んで食べましょう。身体に取り入れた自然の恵みが全部血になり気(エネルギー)になり心と身体が充実するのだという気持ちでいただきましょう。生活リズムを整え、特に早寝を心がけ陰の極まった夜中は寝てるようにしましょう。心も身体も自分の持ち物です。大事にする気持ちを持つ事が養生です。

2006-11-01

 『にきびは青春のシンボル』といったりしますが、思春期のころから増え始める為ホルモンの分泌と皮脂分泌の関係が考えられます。皮脂の分泌異常にともなって雑菌が繁殖して赤く腫れている事も多いと思います。西洋医学では重傷者に抗生剤を投与して抗菌します。漢方でもやはり抗菌ということも考えます。

 清熱解毒とは熱を冷まし身体に入った毒素(菌やウイルスも毒素のうちです)を出すことです。この清熱解毒の働きの中薬を体質的な問題を改善する漢方薬に加えていきます。
皮脂の分泌異常について中医学で考えてみると

脂→痰湿・痰濁

 となります。これは食生活との関りもつよく『脾は生痰の源』といいます。つまり飲食の不摂生によって脾が弱ると痰ができてしまうという事をいっています。脾は清濁分離の働きがありますがこの機能がよわってしますと濁も身体に摂りいれることになります。また肥甘厚味といって油(脂)っこい物・甘いもの・濃い味付けの物は身体に痰(脂)をつくったり摂り入れたりします。ですからニキビ肌の改善には食事のバランスはかかせません。

 青春のシンボルのにきびは思春期の時期に真っ盛り。ホルモンのバランスも関係しているし、脂っこいものでも、甘いものでもモリモリ食べることも関係しています。時々赤く腫れるのが2~3個できる程度なら20才くらいまでには気にならなくなると思います。野菜もモリモリ食べて身体にこもった熱をさますと伴に、腸をお掃除しましょう。また、洗顔も大切ですし、若くてピチピチの肌にファンデーションは必要ありません。新陳代謝のいい肌が毛穴が塞がれて苦しがっていると思います。

 重傷のにきびは中医学の皮膚科で『肺胃湿熱蘊結、感受毒邪、而発病』と考えられます。つまり飲食の不摂生や肥甘厚味を過食する等の原因で、肺や胃に身体に不要なドロドロして熱化したものがたまってしまい、そこに感染をおこして発病するという意味です。治療方法は『清肺胃湿熱、涼血解毒』(①肺胃の湿熱をとって、②血分に入った熱もさまし③毒邪をやっつける)です。

 この3つの事を行うのに1種類の方剤ではたりません。また、硬くしこりになった部分には軟堅散結といって柔らかくして散らす働きのものも加えます。女性の場合、生理との関りがあるときは血の道を整えることが大切です。生理前ににきびが増える方も多いと思いますがイライラしたり、乳房の脹って痛むなどの症状を伴う時は『肝の疏泄機能が失調』しています。普通、逍遥散で改善しますが、怒りっぽい、目の充血、のぼせる、舌の色も赤いなど化熱が見られる時は加味逍遙散を服用します。

 加味逍遙散は逍遥散に肝の熱をさましのぼせを降ろす牡丹皮と山梔子が加えられているものです。医療用には加味逍遙散しかないせいか、こちらの方が有名のようです。しかし漢方薬は身体の傾きを調整するものなので化熱がないときは逍遥散にすべきです。にきびに対して、血の道を調整する漢方薬を服用する時も五行草などの清熱解毒薬を加えます。また症状に応じてお血や痰湿に対する方剤を加えます。

 *我が家の子供達も時々はでにこしらえてる時があります。原因は食べ過ぎ・生活リズムの不摂生などがあるようですが、

「にきびが腫れてるから五行草茶飲まなくちゃ」
「食べ過ぎだから晶三仙も飲まなくちゃ」

 などといってけっこう上手に漢方茶を使いこなしています。