風邪の漢方

パンダ⑥ インフルエンザがはやっています。インフルエンザは症状が急速です。身体にはウイルスと戦う力が備わっています。その備わっている力をいかに引き出すかが風邪の漢方を使う妙味です。実は一昨日の夕方家族が熱を出し帰ってきました。38.8℃。鼻水・悪寒・咳・節々の痛みに対し小青竜湯・地竜・板藍茶を服用しました。夕方一回寝る前一回です。翌朝39.3℃同じもの服用。発汗して38.5℃くらいになり夕方一度39.1℃にあがったがその後すこしづつ解熱して夜には38.0℃になったので寝る前の服用分には肺の熱をさましながら体力と体液を補える香西洋参をくわえた。

 今朝、寒気はなくなり、かえってあつく、鼻はつまって強い咳がでるようになったので麻杏甘石湯・地竜(半分)・板藍茶・香西洋参を服用。二時間後36.3℃となったので地竜ははずした。予後は重要なので今後は補剤を適宜加えていくつもり。ある意味攻めの方法といえるが、体力がある者には使えると思う

 昨日は一日平熱と微熱をいったりきたりしたが、節々の痛みが残っているので漢方の方剤はかえなかった。食欲は徐々にでてきた。今朝は節々の痛みもとれだいぶ楽になっていた。微熱と平熱をいききするので『往来寒熱』と考えた。温かくしていたので寒くは無いが時々あついといっていた為だ。そこで今日から昨日の方剤に小柴胡湯の半量を加えて服用することにした。

 風邪はふうじゃです。風がふくと木の葉が飛んで来たり、色々なものを運んできます。だから風邪(ふうじゃ)は他の邪気を連れてきます。六淫といって外からくる邪気(外邪)は6つあります。風・寒・湿・熱・暑・燥です。風寒だったり風熱だったり風湿だったりまた、時に風寒湿と複数だったりします。症状も邪気の種類によって違います。だから対処法も違います。考えてみると当たり前な事な気がします。寒を寒し熱を熱したら逆療法でよい事はありません。

 漢方は敵を知り己を知る事から始まります。

 風寒の邪気に対する方剤の代表選手は葛根湯です。ゾクゾク寒気がして肩から首筋にかけてこわばり汗はかいていない時につかいます。汗が出てる時は?桂枝湯をつかいます。汗の出し方はとても重要です。邪気を出し、気や陰液はなるべく消耗しない様ということです。桂枝湯は発汗が弱いので桂枝湯をのむのと一緒に熱いおもゆををすすって薬力を助けるとなっています。

 風寒につかう方剤に麻黄湯があります。これは無汗で正気が虚してないときにつかいます。また禁忌もあります。熱証(口渇・脈が速い・熱感がつよい)・気血津液不足・裏熱を伴うときなどですがその他注意点も多い方剤です。

 風熱に対しての代表選手は銀翹散です。おなじみの天津感冒片は銀翹散は芦根を去って羚羊角を加えてあります。羚羊角は熱性の痙攣や意識障害にもつかわれるもので、宇津救命丸にも使われています。熱っぽい・少しの寒気・咽が紅く腫れて痛む・口渇・脈が速い・高熱などは熱症です。風熱の邪は鼻や口から入って肺系を犯します。『温邪は上に受け、首先に肺を犯す』咽が腫れて痛むなら先ず天津感冒片をといっているのはその為です。

 風寒湿の侵入に対する代表選手は霍香正気散(勝湿顆粒)です。解表化湿・理気和中の効能があります。「邪気を追い出して湿を取り除き、停滞した気を動かして胃腸を整える」といことです。陰邪で重濁・粘膩の性質を持つ湿邪が身体にはいると身体は重だるくなります。胃腸のエネルギーは動けなくなり、食欲不振・吐き気・腹が脹る・軟便や下痢など胃腸症状がでます。

 湿邪は陰邪なので冷えを伴う事が多いのですが、個々の持つ体質から化熱したり、風熱に湿をともなうこともあります。その場合、天津感冒片を併用したり、板藍茶や五行草茶をいっしょに飲んだりするといいです。とにかく湿邪はしつこいので病気が長引く傾向にあります。病後も油断せず、生物・冷たいもの・脂っこいものを避け、過食しないようにし、睡眠も充分とるよう心がけましょう。

 日頃身体が弱く風邪をひき易い気虚タイプや、口が乾いてから咳になりやすい陰虚タイプの場合は弱い部分を考えた方剤を使います。敵と戦うのに兵力が強ければ一挙に攻めればいいのですが、兵力が弱いときは戦う力を半分にして残りは体力を補強して守りを固めるようなものです。扶正去邪・身体を守る正気を助けながら邪気を追い出すということです。気虚に対しては参蘇飲・陰虚に対しては加減いずい湯(この処方は日本にはないので天津感冒片と潤肺糖漿を一緒にのんだりします。)陽虚には麻黄附子細辛湯が代表です。

 風邪はひきはじめの3~4日が勝負です。ふうじゃが表にあるうちに表の門を上手に開いて追い出さなくてはいけません。奥の方に侵入させないようにしなくてはなりません。もし長引いてしまったら複雑になりますし、治療の時間もかかります。また、衛気という衛兵の不足で長引いてる時も有ります。

 『去者自去、来者自来』門がひらきっぱなしで守りが手薄にしているので賊が出ていってもすぐまた入ってくる。つまりふうじゃが横行しているということです。これに対しては玉屏風散(衛益顆粒)以外ありません。

 それぞれ体質や症状の出方によって風邪の漢方を使いましょう。