肝臓って?

「アルコールとかを解毒する」
「もの言わぬ臓器っていわれていて気がつかないうちに悪化してるんだって」
「脂っこいものばかり食べてると脂肪肝になっちゃうよ」
「脂肪肝は癌化するの?」

 肝臓に関する知識は色々ですが、解毒というのは誰でも考える事だと思います。

 肝臓の働きは解毒だけではありません。肝臓は物質の代謝と関わっていて 胃腸で消化吸収された栄養素を代謝・貯蔵します。

*ブドウ糖をグリコーゲンとして貯え必要に応じてブドウ糖にして血液中に送り出す。
*アミノ酸から大切な働きをする血漿タンパク質などをつくる。
*脂質代謝 脂肪酸の合成や分解・コレステロールやリン脂質の合成
*脂溶性ビタミンやビタミンB群・ミネラルの貯蔵
*コレステロールと赤血球から胆汁酸やビリルビンを作る
*ホルモンの代謝

 こういった働きが『生体の化学工場』と言われる所以です。

肝臓 中医学で『肝は血を蔵す』といいます。実際、1分間に肝臓に1,000ml~1,800mlの血が流れこんでいて、これは心臓が送り出す血液の25%くらいにあたるそうですから、中医学理論にあてはまると思います。生理学がない時代にこの理論をたてたのは、いかに観察力があったかと感心します。

 肝機能障害になると倦怠感・むかつき・下痢といった脾の働きが悪い症状がでますから、これに対してはやはり健脾します。またイライラ・怒りっぽいなど精神不安もおき易いことからも肝の疏泄の働きをよくする疏肝も必要です。

 十年以上前ですが、ウイルス性肝炎に小柴胡湯が効くという事で医療現場でウイルス性肝炎の人に使い、副作用がでて間質性肺炎で亡くる人まで出た事がありました。これは証をみずにむやみやたらに使った事が原因といわれています。中医学に精通している人達は“小柴胡湯は肝臓疾患を中心に年間100万人以上が内服していた。漢方薬全体の売り上げは年間約1,200億円で、小柴胡湯はその約3割を占めていた。”という事実に驚かずにいられませんでした。

 では、小柴胡湯は怖い漢方薬なのでしょうか?小柴胡湯は中医学では和解剤に属します。半表半裏証に使う方剤です。証を誤らず、また肝陰や肝血を補いながら使えば、ウイルス性肝炎にもっと良い結果が出たのではないかと思います。小柴胡湯は疏肝と健脾の働きの両方を兼ねた方剤です。しかし肝陰・肝血を補えないので、これだけで長期の使用はしません。逍遥散なら当帰と芍薬で養血柔肝できます。

 菅沼栄先生監修の弁証論治の本では、肝炎を病因病機から4つのタイプに分類しています。肝気鬱結・瘀血内停・肝陰不足・肝胆湿熱です。肝気鬱結には逍遥散は使いやすいといえますが、どの程度の疏肝剤が必要かは弁証する必要があります。

 黄疸に使われる茵蔯蒿はカワラヨモギの幼苗ですが退黄の働きがあります。そればかりでなく清熱除湿の働きや軽い疏肝作用もあるので黄疸がなくても使えます。菅沼先生は肝炎予防に煎じて飲むといいと書いています。食養生としては 浮腫む時は大豆・ヨクイニン・山芋・アズキ・はすを、脂肪肝の時は山楂子・とうもろこし・ヨクイニンを、出血傾向の時は黒豆を摂る様にすると良いと書いています。

 肝機能の数値が異常になったら早めに漢方薬をつかって、戻す努力をしておきませんか?