漢方療法と特徴

2010-10-01

 ユリの花はお好きですか?花言葉は威厳・純潔・無垢だそうです。美しく貴賓のある姿ですが、香がきついと感じる方も多いようです。ユリは球根が食用になる事がしられています。ユリは百合とかきますが、球根が沢山の鱗片が重なっている所から百の鱗片が合わさるというのが名前の由来だそうです。また、おせち料理に百合根を入れるのは和合の意味とか・・・おせちでなくても和食料理のお店や旅館で出たりする高級食材です。

 この百合根は実は漢方薬の素材でもあります。漢方では『ゆりね』ではなく『びゃくごう』といいます。・・・ちょっとかわいくないけど・・・百合固金湯という方剤に使われています。

 百合固金湯は

生地黄・熟地黄・麦門冬・百合・白芍・当帰・貝母・生甘草・玄参・桔梗の組み合わせで、
中医学で肺腎陰虚、虚火上炎という状態に使う方剤です。

 よくみるとブルーの字は潤肺糖漿に入っていて牡丹皮と薄荷が入ればほとんど潤肺糖漿になる感じです。ユリ(百合)を中薬学で見てみると心肺を清潤し、潤肺止咳・精心安神の効がある・・・となっています。清潤はさまして潤す事ですが、どういう意味でしょう?

心を清潤するとは?

心は血脈を主る・・・という心臓としての働きの他
心は神を蔵す・・・という心(こころ)も心でとらえています。

 また清とは熱をさますという意味で使う事が多く、肺やこころの熱をさまして潤すと書いてあります。こころの熱がさめて、潤えば自然に気持ちが安定すると思います。ですから、昔の人は神経症などの精神不安の病気を百合病(びゃくごうびょう)と言ったそうです。肺を清潤するとは?・・・・つづく

 肺を清潤するとは?

先ず漢方でいう肺という事について考えてみます。
私達の呼吸は肺で行われています。
これを『肺は呼吸を主る』『一身の気を主る』といいます。

 又肺は『宣発・粛降を主る』といって呼吸による清気の取り込みや濁気の排泄、清気や栄養や津液を全身に輸送し、体表部に到達させ、発汗の調節を行うなど・・・全部肺の働きになります。風邪をひきにくいなどの外邪に対する免疫力は衛気と関係があります。風邪は急性上気道炎というように呼吸器を中心にした病気ですが、ぞくぞく寒気がしたり、汗が出ないため熱が下がらなかったり・・・上気道の症状の他、体表にも症状が表れます。そこが肺としてとらえる事のできる部分といえます。

 このことから肺を清潤するという事は 鼻粘膜・咽口の粘膜・気管支・肺・皮膚を清潤するといえます。~炎の炎の字は炎症という意味で火が二つで熱を思わせます。炎に対しては清熱です。炎があれば燥を生じます。ですから清潤の食品である百合根とてもよい養生食です。

2010-08-01

 今朝 NHKのあさイチ見ましたか?生姜の事をやっていました。生姜は身体を温めると言われている為 テレビや雑誌でよく取り上げれれている為 生姜紅茶や生姜湯などをのんでいる人も多いようです。

 今日の内容はこんなです。冷え性なAさんは生姜紅茶を飲み・漬物にも千切りの生姜を入れるなど生の生姜を色々使っています。これに対して3人の学者がダメだししました。登場したのが乾燥した生姜です。これと生の生姜を食した後の身体の温度変化をみると生は体表部の温度は上がるけれど、体内(耳の中の温度)は下がりました。ひきかえ乾燥品は体表部の温度は上がり、体内(耳の中の温度)に変化はありませんでした。それで乾燥した生姜はウルトラ生姜なのだそうです。

 実は中医学で生姜はその働きにあわせて使われてきました。

生姜・・・ショウキョウ 
乾姜・・・カンキョウ
炮姜・・・ホウキョウ
の三種類です。

 ショウキョウは葛根湯や桂枝湯など寒気の風邪の方剤に使われ、カンキョウは人参湯や四逆湯など体内の冷えが酷い時の方剤に使われています。乾姜を使うような冷えは陽気不足の冷えです。冬は寒がり・夏は暑がりの人は衛気不足や気血両虚・脾虚湿盛など適応できず寒邪・湿邪・暑邪など六淫の邪のやられやすい体質の時もあります。

 中薬学には乾姜は辛熱燥烈であるから、陰虚有熱・妊娠には禁忌となっています。辛熱燥烈とは辛く 熱く 乾燥しやすく その性質が峻烈だといってるわけですから、陽虚以外の人は常用は避けたほうがいい事がわかります。特に血虚や気血両虚の為に冷える人は要注意です。陰血や気が消耗してしまいます。生姜も自分にあった摂り方が大事なようです。

2010-03-01

「風邪ひいたみたい。」
「気候が不安定だから、身体を冷やしたんじゃないの?熱を測ってみたら?」
「ゾクゾク寒気がすると思ったら、38℃もある!」
「ゾクゾク寒気があるんだね。、じゃあ風寒だから汗は出てないようだし葛根湯を服用するといいよ。」

 漢方でいう寒熱ってなんでしょう?熱が38℃という事は体温は高い、つまり身体を触れば熱いという事です。でも、本人の感じ方は寒いです。背筋が温まらず冷えている感覚をもっているわけです。これに対して漢方は風寒の邪気によると判断して、辛く温かい漢方薬で身体を温め発汗する事によって対抗します。漢方の寒熱は体温の事ではなさそうだ・・・という事がわかります。
漢方に使われる植物・動物・鉱物の主なものは中薬とよばれ、中薬学の本にのっています。本のなかに1つ1つの中薬が解説されていますが、性味という項目に寒とか温とかかかれています。葛根湯の中の麻黄は温・桂枝も温とかかれています。

 漢方で薬効のある物とされる動、植物や鉱物は『五味があり、四気がある』と中国に現存する最古の本草学の専門書である『神農本草経』に書かれています。『神農は百草を嘗め、1日にして70毒に遇う』と記された神農はという人物がいたわけでなく、実際は多くの経験則の集大成なのです。中薬(薬物)の薬性のうち四気は寒・熱・温・涼に分類されていますが、古人(昔の人)の医療経験からなるもので、科学的な根拠があるものではありません。しかし、科学的実証以上に超長期にわたって得た経験則は重要視すべき宝のようなものだと私自身は思っています。ところで、実際は平があります。つまり以下のようです。

熱←温←平→涼→寒

 この中薬の寒熱にそった扱い方は単に身体を冷やすか温めるかではありません。寒邪・熱邪の邪気に対する時もあるし、身体の陰陽に対する考えもあります。肝鬱化火のように神経の興奮の意味合いが大きい時もあります。また、そうきっちり寒熱を分けれない事もあります。寒熱挟雑!むしろ、その方が多いと思います。陰陽で考えれば動は陽、静は陰ですから、エネルギー過多の状態も熱です。

 例えば甲状腺機能亢進症の場合『亢進』という言葉からも熱でとらえる事ができる事がわかります。ただその場合、虚火・虚熱であることが多いので、とにかく寒剤で冷やそうとするのは間違いです。

 同じものでも、寒熱の違いがあります。一般に炒ったり、干したりと熱をくわえると温の方に傾きます。例えばショウガです。
生姜(ショウキョウ)は生で微温 乾姜(カンキョウ)は干したもので大熱 またジオウは生地黄(ショウジオウ)は生で寒
熟地黄(ジュクジオウ)は蒸したもので微温です。ですから食品においても熱を加える事によって寒熱は変化するので冷えるタイプや代謝がわるいタイプは熱を加えたものを食べる方がいい事がわかります。は身体の状態を表している事はテレビなどでも取り上げられているので知っている人も多いと思います。代謝がおちこんで冷えている時は白くぶよぶよした感じの舌の時が多いです。

 寒邪が入った時は気血の流れが鬱滞して紫っぽくなる事も多くみられます。子供の頃、プールや海泳ぎに行った時に「唇が紫になっているから上がって温まりなさい」といわれた経験はありませんか?また、熱がある時など舌の色が紅くなります。走ったり、運動したり、食事の後なども赤っぽくなります。これは熱や熱エネルギーが充満や神経の興奮などを表しています。舌が赤いのに、冷えを訴える事もあります。これは気鬱化火で、『気が巡らなければ、血も巡らない』為に血行不良になっている事も考えられます。中医学を熟知している人達は「まず、弁証」という言葉を口にしますが、中医学的な鑑別なしに漢方薬を選ぶ事はありえません。

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