肺虚と肺の働き

 肺虚とは

①肺(形態としての)が足りない(弱い)
②肺の働きが足りない(弱い)ということです。

 肺は嬌臓(よわよわしい)といわれます。いつでも呼吸を通じて外界とつながっていて邪気を受けやすいからです。空気中の細菌かび・ほこり・排気ガス・タバコの煙・花粉など・・・鼻水や痰は不要なものを排泄する防御機能ともいえます。体内に悪いものを入れないように粘膜に抗体があってブロックしています。中医学では邪気を入れないようにする力(気)を衛気といいます。鼻や喉は肺のグループでその粘膜は肺衛といって防御壁です。肺虚で衛気不足だと防御機能も弱く、風邪を引き易い・喘息・アレルギー性鼻炎、その外にもウイルスや細菌など邪気の侵入によってかかる病気になりやすいといえます。

 肺の大事な働きは呼吸です。人は呼吸できなければ生きていられません。呼吸は身体の営みになくてはならないのです。宗気という気は肺自身の呼吸の働きや心臓の駆血力をはじめとする血の運行の動力となる気です。肺は宗気の生成にかかわっています。肺で吸収された気と脾胃の運化作用によって飲食物から得た水穀の気が合わさって宗気がつくられます。ですから『肺は一身の気を主る』といいます。肺虚だと呼吸が弱いばかりでなく、宗気の生成も減り、血の運行も支障がでます。

 肺と心臓は肺静脈・肺動脈でつながっています。身体中に酸素をはこんできた血液は使用済みの二酸化炭素をもって心臓にかえってきます。それを心臓は肺に送りだし、血液は二酸化炭素を酸素に交換してもらって心臓にかえってきます。中医学の考え方でも『肺の呼吸』と『心の血脈を主る』ということが宗気を通じて関係しています。

 肺は宣発粛降を主る

 また、訳の解らない言葉がでてきたが何となくイメージはできますか?宣発は外・上に向かう感じで粛降は内・下に向かう感じがします。息を吸ったり、出したりも1つです。他には 宣発は外・上ですから全身や体表部へ向かって発します。何を発するのでしょう?それは脾で輸送された津液や水穀の精微や邪気から身体を防衛する衛気とかです。また、粛降の方は内・下ですから津液や水穀の精微が五臓に向かいます。肺は五臓の中で一番高い位置にあります。ですから その働きがわるくなると大変!咳や鼻水、鼻づまり・汗のかきすぎや無汗・浮腫みなどの症状がでます。

 宣発作用は水液を全身に散布し発汗と関係しているし、粛降は腎、膀胱に水液を降ろす働きで水液の排泄と関係しています。これを肺は水道を通調するといいます。宣発機能が失調し、汗が出なくなると体温調節ができなくなり熱がこもりるし、浮腫みがおきます。また粛降作用が失調すると尿の出が悪くなったり、浮腫みが出たりします。ですから肺気虚の人は浮腫み易く、湿度が多いのは苦手です。梅雨や秋雨の頃や台風の来る前などは喘息発作がおきやすかったり、痰が絡んで来たり、身体がおもだるかったりし易いです。

 尿の出が悪いと普通「膀胱かな?腎臓かな?」って考えます。中医学漢方では肺や脾も関係しています。

①肺の通調水道の働きは?
②脾の運化は?(栄養や水分の輸送の働きの事です。)
③腎の水液を主る働きは?
(その外 膀胱・腸・三焦など水液代謝にかかわっています。)

 肺虚で機能面が弱いと呼吸が弱い、浅い・病気にかかりやすい、浮腫み易い・発汗の調節が悪い・・・などの症状がでます。では肺虚で物質面の不足は肺陰虚といいます。肺陰が不足しているとは、肺のグループの潤いが不足しているという事です。つまり粘膜があれて、刺激に弱くなっている・乾燥ぎみ・痰はでないか水分が少ないため粘って出しにくい・・・などの状態がでてきます。肺は呼吸ばかりでなく、外邪に対する免疫力や血の巡りに対しても役目をはたしていることが解ったと思います。

 余談ですが、今朝のニュースで昨日の白鵬の取り組みの事を、“相手の力士がなかなか手をつかないので、白鵬は怒って力が入り、あぶなげなく勝ちました。”といっていました。中医学的にいうと『怒により肝が実し、力が入った(エネルギーがどっと流れた)』といえると思います。気持ちと肝は関係しています。目を見開いて相手をにらむのは怒によって肝を実しさせようとする動作です。「興奮してしまって」としきりに反省していましたといっていましたが、取り組みに際してはこの強い気の働きは大事です。

 がんばれ!!