更年期

 近頃は男性の更年期も取り上げられるようになってきていますが女性の更年期を漢方ではどう考えるのでしょう。

七七(49才)任脈虚し、太衝脈衰え少なし、天癸尽き、地道通ぜず。
故に形壊れて而して子無き也。

 更年期はこの時期です。9月のブログにもこの意味は書いてあります。更年期はこの時期です。 年をとらない人はいないわけですから、卵巣も同じで閉経をむかえます。腎は生長・発育・生殖を主るといい、腎気も衰えます。また腎に真陰・真陽があり陰陽のバランスの崩れは腎虚が原因している事が多いです。更年期を特になんにもなくすごす人もいますし、更年期障害に悩まされる人もいます。更年期の基に腎虚がある事は必ず考えに入れる必要があります。

 もう一つ大切なのは肝です。女性は血から衰えるといわれるのは月経によって血が失われると言う事があります。肝蔵血といい肝は血の蔵、血を貯蔵する所です。血の不足により肝血虚・肝陰虚と言う状態になります。肝の血と腎の精は転化する(精⇔血)ことができるので肝腎同源とか精血同源とかいいます。

 また肝は疏泄を主る・・・の働きも失調します。疏泄とは、気(身体動かすエネルギーや情志)の働きの調節機能のようなものです。例えば疏泄の失調によって気が滞ると血を巡らすエネルギーも滞るのでお血になります。(気滞血瘀)ですから更年期障害の予防にはまず血を補う事が大切です。つまり肝腎が不足してくる事が更年期ともいえると思います。この肝腎不足の原因に脾が関わっている事もあります。

 脾は気血生化の源ですから脾がよわければ血も不足しがちになります。また気血を生むことによって後天的に腎精を補っていますがこれも不足しやすくなります。これらを更年期を迎える前から整えておくことが大切です。

 更年期の症状はいろいろです。

急にあつくなって汗がでる・顔のほてり・肩こり・頭痛・動悸・息切れ・クヨクヨ・イライラ・不安・不眠・疲労・痛み・・・・・
更に骨粗しょう症・コレステロール値が高くなったり・血圧が上がって来たりする方もいます。

 中医学漢方では根本原因は肝腎(精血)の不足と考え、それに伴う五臓・気血水・陰陽・寒熱などのバランスをみていきます。更年期に対しては、病気の本質にアプローチする本治と症状に対応する標治を同時に行う事がいいと思います。

「出かけた時血圧計があったので測ってみたら高かったんです。」

「どのくらいですか?」

「140もあったんです。140って高血圧ですよね。それに脈もはやかったんです。」

「安静にしてから測りましたか?。」

「がやがやしているところだったので・・・」

「だから高めだったのかもしれませんね。」

「でもこの頃、めまいや耳鳴りがしたり、時に、イライラしたり、胃腸の調子もよくなくて気持ち悪くなったりで、でも食べちゃうんですよね。メタボも心配!更年期かしら?」

「眠りはどうですか?」

「寝つきが悪いです。 それと時々動悸があります。それに以前より恐がりになってる気がします。」

「生理はどうですか?」

「量は少なくなっているし、来ない月もあります。腰が痛くなりやすいし、粘ったおりものが少し多いかもしれません。」

 この症状から2つの事が考えられます。1つは痰熱があり胆胃不和、もう1つは血虚・腎虚です。方剤は理気化痰・清胆和胃の温胆湯と滋腎養肝・明目の杞菊地黄丸がいいです。

 私も更年期の最中です。多少ホットフラッシュがある事はありますが、特に更年期障害といわれる症状はありません。もちろん、漢方薬は使っています。バランスが悪くなりすぎないうちに処置する事が大事です。

 更年期が老化の過程です。老化しない人なんていません。若若しくいると言う事すべてが、女性ホルモンのおかげというわけではありません。バランスのいい食生活や睡眠や運動が健康と若さを応援してくれると思います。

 肝腎は老化と深い関わりがあります。腎の陰陽は真陽・真陰で、腎陽は命門の火・腎陰は命門の水といわれます。更年期障害のない人も肝腎を補うことは将来に向けても意義のある事だとおもいます。できれば、五七(35才)になると腎気が充足が減りはじめるので、その頃から更年期に備えるといいと思います。