不整脈と季節

パンダ② 不整脈があれば循環器科を受診して心電図など心蔵の検査をします。西洋医学では心蔵の病気ととらえているからです。

もし検査の結果、何も見つからないと精神的な問題だと言われ安定剤を処方されたり、心療内科の受診を勧められた方も多いと思います。

 

中医学では不整脈は心の『血脈を主る』働きの失調

 中医学で考えると不整脈は心の『血脈を主る』働きの失調ですから、もちろん心も考えに入れますが、五行の相生関係にある肝や脾の失調が影響しているかもしれないですし、相克の関係にある肺や腎が影響しているかもしれないという事も考慮します。

 また、気候や環境や食生活など個人をとります状況が大きく関係しているかもしれません。ここでは気候の変化を中心に考えてみます。

春は肝の季節

 春は肝の季節です。肝は五行の木の臓で、木の性質を持ちます。春先木の芽がふいて木々は枝を伸ばし新緑の葉をつけていきます。肝気は上に向かいます。温かくなり鳥が巣立つように自由に羽ばたきたい気分です。しかしストレスがかかると、そうはいきません。それは社会環境など個人を取り巻く周囲からストレスをうけている場合もありますが、自己を拘束している場合もあります。こうあるべきなのにこうならない。こうしたいのにできない。思い通りにならない。人がどう思うか気になる。などは自分のこだわりからストレスを招いている事も多くみられます。そうすると肝木は伸びやかに枝を伸ばす事が出来ずに肝鬱気滞の状態になります。

 また、肝が弱っている場合も同じです。年をとると肝腎が不足しがちになるので、特にストレスや緊張が強くなくても 疏泄機能が失調しやすくなります。肝血・肝陰の不足から疏泄機能の失調・肝陽上亢などにより脈の一定なリズムが保てなくなります。また血圧が不安定になったり、気分にむらがあったり、ホットフラッシュのように急にあつくなったり、汗がでたり、その為風邪をひきやすくなったり、あちこちに痛みやかゆみが出たりとか不定愁訴が伴う事も多くみられます。

夏は心の季節

 夏は心の季節で五行は火ですので、心火と言ったりもします。夏は一般に脈も少し早くなります。心火亢盛になるとエネルギー過多の状態ですので、ドキドキがとまらない。心蔵の音が聞こえる。頻脈から心房細動を起こす事もあります。もちろん汗で津液も失われやすく、虚血性心疾患に伴う不整脈になることもあります。また心火に強い状態は心血・心陰・心気を消耗しやすく、逆に心気不足によって脈の結代が生じる事もあります。こういう事から心原生の脳梗塞をおこす場合もあります。また、『神を臓す』機能が失調し不眠にもなり易いです。とにかく夏の不整脈に対しては心火を抑え、心気を補い、津液を補う事が大事です。

 四季の最後の約20日は脾気が旺盛になる時期で、土用と言い精がつくものを食べたりします。脾は土で気血精を作り出すところですから、ここが弱るとエネルギーがなくなって気力も体力もなくなってしまいます。食欲がない、軟便や下痢がつづく、疲れがとれない・・・など夏の終わり(長夏)の夏ばてのような状態ですが、脾の弱りによるものです。脾は心と母子関係にあって、心の弱りは脾に伝わり、心脾両虚になると動悸の他に眠りが浅い、不安感がある、色々考えすぎてしまう、物忘れが多いなどの症状がでます。脾は湿が多いと、うまく働けないので、除湿、利湿、化湿などの方法とともに夏の終わりには気津両虚や心脾両虚になっている事を考えにいれます。

秋は肺の季節

 秋は肺の季節で燥と関係しています。『肺は一身の気を主る』と言って呼吸によって気を取り込みます。夏に津液を消耗した上に、長夏の頃に脾胃の働きが弱くて津液の生成ができないと秋の燥に対応できなくなります。津液の不足で血液がドロドロになると血の巡りが悪くなって、虚血性心疾患が悪化し、それによる不整脈もおこりやすくなります。やはり、気津を補い宗気の回復をはかると共に瘀血を考えた方が良いようです。

冬は腎に季節

 冬は腎に季節で寒さが厳しい時期です。寒凝といって寒は凝滞させるという性質をもっています。やはり瘀血は絶対に考える必要があります。また心陽が不足したり心腎のバランスがとれなくなったりします。腎陰の不足により虚陽が上浮し不整脈になる場合もあります。もともと瘀血のある人や西洋医学的には狭心症などの虚血性心疾患や動脈瘤、静脈瘤などの循環器系疾患のある人は心配な季節です。身体を冷やさないようにすると共に、活血化瘀薬、補腎陽、補心陽、補腎陰など症状や体質にあわせて行っていくと良いようです。

 このように中医学においては気候などの環境も重要な疾病の発症要素と考えます。