五涼華

「また、不規則にしてたらニキビが痛くなってきちゃった。」
「五涼華という名前の漢方茶がでたよ。飲むといいよ。」
「フラーリンQ(当帰芍薬散加減)や五行草茶と一緒でいいの?」
「もちろん!」
「五涼華ってステキな名前ね。」
「5種類の花の咲く植物でできているのよ。」

 たんぽぽ・忍冬(金銀花)・野菊・すみれ(紫花地丁)・イヌホウズキ(竜葵)涼しい華という名前の通り、余分な熱をとってくれるお茶なんだよ。ニキビは悪化すると紅く腫れて熱もってくるから、このお茶を飲むといいよ。ニキビ以外にもいろいろ使えるけど・・・・

「にがーい!!!」
「そのままのまないで  お湯に溶かしたらいのに。
お湯の量を増やすと苦くなくて飲みやすいよ。
豆乳を加えても苦くなくなるし。」
「うん。薄めると飲み易いね。」

 中医学(漢方)の皮膚病に対する考え方、漢方薬の使い方は西洋医学とは違います。何の病気という病名診断から入るわけではありません。皮膚の状態・体質・邪気・病位などを考察して、漢方薬を決めます。例えば急性の痒みを伴うようなもの(急性蕁麻疹や急性湿疹など)は風邪によるものと考えます。だから風邪を追い出す事を主にします。

 いろいろな症状のうち毒熱過盛、化膿性皮膚疾患に分類される状態があります。例えば 癰・疔(おできなど)・虫刺されの炎症・リンパ管炎など、またニキビも紅く腫れるとこれにあたります。張志礼先生の医案によると、この時は金銀花・連翹・蒲公英・紫花地丁・赤芍・敗醤草・野菊花・大青葉(板藍根と同じ植物の葉っぱです)・馬歯けん(五行草)・竜葵などの清熱解毒の働きを持つ植物を使います。

 また重症には牛黄粉をくわえ、潰瘍が治りにくい時は黄耆を加えると書いてあります。

「ワーイ!!これでニキビバイバイだ!  さっそく五涼華をかってこよっと。」
「ちょっと待って!!ちゃんと相談してからでないとだめだよ。」

 清熱解毒の植物は五涼華だけではありません。五行草茶(馬歯けん)・板藍茶(板藍根)・白花蛇舌草・連翹など他にいろいろあります。またワグラスD(排膿散及湯加減)でよくなった経験を持つ人もいます。また紅く腫れるタイプのニキビでなければ清熱解毒はいりません。

何故、ニキビができるのか?
何故、皮脂分泌が異常になっているのか?

 考察しなくてはいけません。五涼華の中の植物を中薬学の本でみると“実熱火毒のみに用いる”と書いてあります。実熱火毒ってどういう意味でしょう? 実熱火毒っていうのは、熱が出たり、紅く腫れるなどの炎症をひきおこしたりする熱性の邪毒(細菌や蜂の毒など)にやられている状態のことだよ。

「アトピー性皮膚炎でも紅くなっている時は飲んでいいの?」
「いいよ。ただしアトピー性皮膚炎の人は体質の弱さから症状がでているので、そこを考えないとね。 たとえば脾胃気虚の人も多いので、苦くて冷ます物は健脾しながら飲まないとね。」
「じゃあ 飲まない方がいいってこと?」
「そんな事はないんだ。皮膚のバリアが弱いため、外邪にやられ易いので清熱解毒の物も必要なんだよ。」
「なるほど。脾胃を守りながら飲むってことなんだね。」

 五涼華にタンポポ(蒲公英)が使われていますが、タンポポの根を炒ってタンポポコーヒーといってのんだ事がある方も多いと思います。漢方で使うタンポポは根を使う時も全草使う時もあります。使い道は同じです。

 実ははタンポポの事で、気になっている事があります。産後お乳の出の悪い時にタンポポ茶を飲むようにすすめられた人も多いと思います。それは通乳(お乳の道を通じさせ出るようにする)という働きがあるからです。中薬学で“通乳に働き乳癰の要薬である”となっています。乳腺炎でしこりを生じ痛みがありお乳がうまくでない時はおすすめです。

 でも、血虚で体力がなくお乳の生成が悪い時はちがいます。産後が冷やさない方がいいわけですから、熱や炎症がないのにやたらにタンポポ茶を飲むのは心配です。冷ますものは熱や腫れなど熱証があってはじめてつかえます。打ち身で紅く腫れあがっている時は氷で冷やして気持ちいいとおもいます。でも、なんでもない所を氷で冷やしたら冷たくて痛いでしょう。

 いつも書いている事ですが、漢方は身体の向きにあわせて使います。漢方茶も同じです。