下痢を中医学で考える

パンダ⑤ 下痢と一口にいっても色々なタイプがあります。小さい頃からお腹が弱くて下痢しやすい人。お腹が張りやすく、便秘も下痢も或る人。冷えると軟便になったり下痢したりする人。緊張すると下痢する人。食べ物によって下痢する人。・・・その食べ物も合わないで下痢する時と、消化不良で下痢する時は違っています。細菌やウイルスによって下痢した時。それぞれ全ぶ違います。

 飲食物の消化・吸収、栄養物質や水分の輸送は脾胃の働きによってなされています。この働きに肝の疏泄機能も関わっています。更に言えば心・肺・腎も相生や相克の関係でつながっています。

 “脾は昇清を主り・胃は降濁を主る”といい 脾のエネルギーは上に向かっています。この力が弱いと(脾気虚、中気不足)下痢しやすくなります。この時 補中丸や健胃顆粒やリキ錠などを使います。もし 脾気虚で水湿が多ければ健脾散を使います。健脾散の使い方として下痢が続いて脾陰が不足した時も使えます。中に脾陰を滋潤する山薬・蓮子・白扁豆・薏苡仁が入っているからです。

 いつもお腹が冷えやす 軟便や下痢っぽくなったり、お腹がひきつれたり、痛んだりする時は虚労散が奏効します。更に冷えが酷く手足も冷えて下痢し、元気がなく 時に息切れしたりして エネルギーの不足が著しい時は理中湯を使います。これらは体質の虚弱が関係した下痢です。神経を使うタイプで緊張すると下痢になる。または下痢と便秘を繰り返すタイプの人、たとえば過敏性腸症候群の人は肝気横逆とか肝脾不和といわれる状態です。漢方薬では開気丸や逍遥丸 または香砂六君子湯(健胃顆粒)などを使うと良いです。

 他に急性胃腸炎のような外邪が関係した下痢があります。例えばウイルス性や細菌性の胃腸炎で 昔から胃腸型感冒とかお腹の風邪とかいわれるタイプのものです。その時は勝湿顆粒のような外邪を払って内を整えるタイプの漢方薬を使います。この時 涼血治痢・解毒消腫の馬歯莧を一緒に飲みます。その昔 赤痢の時に飲んだといわれるもので、もしお腹の痛みが酷かったり、便に血が混じるようなら必ず飲んでおくとよいです。もし 水っぽい下痢が止まらなければ 分利という働きのあるフラーリンA(胃苓湯加減)を加えます。

 潰瘍性大腸炎のように原因不明の炎症→糜爛→潰瘍と進む場合は清熱解毒涼血という方法も必要になります。また脾胃を助け、力をつけていく必要もあるでしょうし、肝の問題あればそこも見なくてはいけないと思います。脾胃は気血を作る源ですから健脾益気して整えておきましょう。

 下痢に対して漢方薬は大きな助けになると思います。しかし 下痢しやすくなったのはその裏に大きな病気が隠れている時もあります。特に今まででそんな事なかったのに体質がかわったのかしら?と思うようなときは必ず受診してください。