胃腸と病気

2016-02-22

パンダ⑨ 大腸の粘膜に慢性の炎症がおこる原因不明の難病です。直腸から発症し炎症が広がっていきます。軽症では炎症部位は直腸の辺りで症状は血便です。更に左結腸全体に炎症が広がると血便の他、下痢や下腹部痛もおこります。大腸全体に炎症が広がると、重症の場合は血性の激しい下痢、腹痛、発熱、頻脈、脱水を起こす事もあります。

 投薬治療が奏効しない場合は大腸の切除手術を行います。また、血液透析によって白血球を除去する方法でよくなってくる場合もあるそうです。投薬治療は主に炎症を抑える薬を使います。急性期と緩快期を繰り返しなかなかよくならない疾患です。遺伝性、ストレス、肉体疲労が要因と考えられています。

 これを中医学で考えてみましょう。軽度でも重度でも血便はあるので血証の範疇でみることができます。さらに泄瀉、腹痛も考えます。血液の交換で症状が改善する事があるのなら、病は深く血分まで及んでいると考えられます。そうであるなら涼血薬を使うのが良いと思います。槐角丸や清営顆粒は涼血薬が使われた方剤です。特に槐角・地楡は涼血止血の働きがあります。中医内科学では便血を腸道湿熱と脾胃虚寒に分けています。

 『腸道湿熱の場合便血は鮮紅色ですっきり排便できず、ドロドロした軟便で 腹痛があったり口に苦味を感じたりする。その時は槐角丸を中心に加減して使う。』と書いてあります。加える方剤として、ストレスが要因なら疏肝や理気を加えた方が良いでしょうし、肉体疲労が要因なら気血不足や肝腎不足なども考慮した方が良いと思われます。難治性の炎症、潰瘍と考えるなら治癒力の低下を考えないわけにいきません。それには托瘡生肌の働きを有する黄耆製剤も加えると良いと思います。

 いずれにせよ中医学の見方から病因を考えなくてはなりません。そうして、何故、現症状になったのか?病機(発展のメカニズム)を考察します。ノロウイルスとかの外邪によって胃腸炎を起こした事がきっかけかもしれないし、お酒や過食や辛いものの食べすぎかもしれないし、ストレスかもしれないし、過労かもしれないし、素体の弱さからかもしれないし・・・このことを知ることが中医学によって方剤を使いこなし治癒に導くのに重要な事なのです。

2015-01-15

パンダ⑤ 下痢と一口にいっても色々なタイプがあります。小さい頃からお腹が弱くて下痢しやすい人。お腹が張りやすく、便秘も下痢も或る人。冷えると軟便になったり下痢したりする人。緊張すると下痢する人。食べ物によって下痢する人。・・・その食べ物も合わないで下痢する時と、消化不良で下痢する時は違っています。細菌やウイルスによって下痢した時。それぞれ全ぶ違います。

 飲食物の消化・吸収、栄養物質や水分の輸送は脾胃の働きによってなされています。この働きに肝の疏泄機能も関わっています。更に言えば心・肺・腎も相生や相克の関係でつながっています。

 “脾は昇清を主り・胃は降濁を主る”といい 脾のエネルギーは上に向かっています。この力が弱いと(脾気虚、中気不足)下痢しやすくなります。この時 補中丸や健胃顆粒やリキ錠などを使います。もし 脾気虚で水湿が多ければ健脾散を使います。健脾散の使い方として下痢が続いて脾陰が不足した時も使えます。中に脾陰を滋潤する山薬・蓮子・白扁豆・薏苡仁が入っているからです。

 いつもお腹が冷えやす 軟便や下痢っぽくなったり、お腹がひきつれたり、痛んだりする時は虚労散が奏効します。更に冷えが酷く手足も冷えて下痢し、元気がなく 時に息切れしたりして エネルギーの不足が著しい時は理中湯を使います。これらは体質の虚弱が関係した下痢です。神経を使うタイプで緊張すると下痢になる。または下痢と便秘を繰り返すタイプの人、たとえば過敏性腸症候群の人は肝気横逆とか肝脾不和といわれる状態です。漢方薬では開気丸や逍遥丸 または香砂六君子湯(健胃顆粒)などを使うと良いです。

 他に急性胃腸炎のような外邪が関係した下痢があります。例えばウイルス性や細菌性の胃腸炎で 昔から胃腸型感冒とかお腹の風邪とかいわれるタイプのものです。その時は勝湿顆粒のような外邪を払って内を整えるタイプの漢方薬を使います。この時 涼血治痢・解毒消腫の馬歯莧を一緒に飲みます。その昔 赤痢の時に飲んだといわれるもので、もしお腹の痛みが酷かったり、便に血が混じるようなら必ず飲んでおくとよいです。もし 水っぽい下痢が止まらなければ 分利という働きのあるフラーリンA(胃苓湯加減)を加えます。

 潰瘍性大腸炎のように原因不明の炎症→糜爛→潰瘍と進む場合は清熱解毒涼血という方法も必要になります。また脾胃を助け、力をつけていく必要もあるでしょうし、肝の問題あればそこも見なくてはいけないと思います。脾胃は気血を作る源ですから健脾益気して整えておきましょう。

 下痢に対して漢方薬は大きな助けになると思います。しかし 下痢しやすくなったのはその裏に大きな病気が隠れている時もあります。特に今まででそんな事なかったのに体質がかわったのかしら?と思うようなときは必ず受診してください。

2015-01-15

パンダ⑦ 胃食道逆流症GERDが話題になっています。胃から食道に胃液や食べ物など逆流する事により色々な症状がでます。喉の異物感・胸焼け・咳など。咳も?と思われるかもしれませんが、食べ物でむせて咳き込む事から考えれば納得できると思います。要因は食道と胃のつなぎ目付近の括約筋がゆるんで、胃酸や食べ物が逆流するそうです。もし胃酸やペプシンなどの消化液の逆流により胃の入り口や食道が炎症すれば逆流性食道炎となります。胃壁や食道の壁が侵食され、酷くなると潰瘍になります。もし長期におよぶと粘膜が変性して癌にならないとも限りません。

 西洋医学では胃酸の分泌を抑える薬で侵食を防ぎます。プロトンポンプ阻害剤やガスター10のようなH2ブロッカーを使っている方は沢山いらっしゃいます。でも括約筋の緩みなどの開閉の異常に対して改善する方法はありません。開閉するシステムの異常を考えたとき

1つはエネルギー的不足によってしっかり閉める事ができない。
2つ目は柔軟性が失われているため器質的にしっかり閉められない。
3つ目は機能が混乱している(調節機能の異常)

 など幾つかの事が考えられるのではないでしょうか?そのうち1を中医学で考えると、気虚にあたります。しっかりもれないように閉めておくのは気の固摂作用にあたります。

 赤ちゃんにお乳やミルクを飲ませた後、軽く背中をたたいてげっぷを出させ、しばらく寝かせないで抱っこしておきます。これは胃が牛乳瓶のようにまっすぐしている事に加え、括約筋の筋力も弱いので、乳がもどりやすいからです。小さな赤ちゃんはまだ気の力も弱いのです。

 中高年ではどうでしょう。若い時は多少の食べすぎや飲みすぎがから胃食道逆流症になることは少ないと思います。しかし年齢が進むにつれて気の力も弱くなってきます。中年以降は食べすぎや飲み過ぎを避け よく噛んで 規則正しい食生活をする事が大切です。しかし若ければ大丈夫というわけではありません。酷い食生活や生活リズムの乱れが長期に及べば脾胃を傷つけます。脾胃の働きの弱い人は ある一定の年齢になったらしっかり養生すると共に健脾薬を服用し機能をバックアップする事も大切です。健胃顆粒・健脾散・リキ錠・虚労散・補中丸・心脾顆粒など個々にあった漢方薬を滋薬として使って行く事も良いと思います。

 2つ目の器質的に問題があるという事は筋肉が硬くなっているという事で考えられるのではないでしょうか。中医学で『肝は筋を主る』といいます。この言葉を基に養血・柔肝という方法と『痛む・しこる・黒ずむ』は瘀血の要素ということから、活血化瘀という方法を用いたいと考えます。

 さらに3つ目は若い方にもみられると思いますが、ストレスとも関係しています。機能のコントロールがうまくいかないという事は肝の疎泄機能の失調と関係していますから、温胆湯・逍遥丸・開気丸・気上散・抑肝眩悸散などが考えられますが、元に脾胃気虚がある場合は健脾の方剤を併用します。

 胃食道逆流症の考え方についてのべました。いつから どうして そして現状は?というのが中医学漢方において身体がどうなっているかを知る重要なポイントです。治そうと思えば 先ず知ることから始まります。

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