腎臓の病気

 昨日は埼玉中医薬研究会で「腎炎と腎」について、中医臨床の弁証論治トレーニングのコメントを書いていらっしゃる高橋先生を講師に招き勉強しました。毎年、腎臓の病気の悪化から慢性腎不全となり、進行して腎臓が機能しなくなると人工透析を行うようになります。

 腎臓病の原因には腎炎や腎盂炎またIgA腎症など腎臓疾患による場合と糖尿病や高血圧などの原因で2次的に腎臓病になる場合とがあります。中医学の未病を治す学問なので、できれば腎不全にならないように、また、自分の腎臓が少しでも長持ちするようにという点でとても助けになると思います。

 腎臓は血液の濾過装置です。

 腎臓に集まった血液を濾過し源尿(小水の素)をつくり尿細管という管を通る間に必要なものを再吸収し膀胱へ運びます。腎臓の病気はこの尿を作る仕組みがうまくいかなくなるものです。必要なタンパクや血液が尿中に漏れ出したり、尿が少なくなったり、浮腫んだりします。

 中医学でこの腎臓の仕組みを考えると「肺」「脾」「腎」の3臓が関っています。また、瘀血、痰濁を考えにいれなくてはなりません。尿の生成と関係する腎臓の病気になると浮腫みがでます。中医学で浮腫みは肺・脾・腎の3臓と関係しています。「肺は水道を通調する」「脾は水液の運化を主る」「腎は水液をつかさどる」などといいます。急性腎炎などで浮腫が生じる時は瞼・顔など上のほうから浮腫んできます。風邪などの外邪の侵襲により肺の働きが阻害されたからです。脾の運化が失調した時は四肢の浮腫みがでます。腎の働きの失調は下半身にでます。

 近年、腎臓の病気の治療に瘀血を考慮することが重要視されてきています。中医臨床2004年12月号に中医腎疾患の権威・陳以平教授の研究の特集がくまれていました。その中に腎臓の病気における瘀血の形成の事が以下のように書かれています。

 腎糸球体は

1.毛細血管網によって形成されている
2.レニンの分泌や糸球体血流量などの調節機能をもっている
3.非常に微細な血管

 腎疾患が発生すると血流抵抗の増大・血流速度の低下により血液粘度が増す。

 中医学でこの状況は

脾腎両虚による水湿停聚→スムーズな気血の運行失調→瘀血(腎臓が瘀阻絡傷)

 瘀阻絡傷とは微小循環が瘀血の停滞で傷つけられるという意味です。陳先生は活血化瘀通絡の為にどんな中薬をつかっているのでしょうか。丹参・大黄・益母草・沢蘭・当帰・川きゅう・紅花・赤芍・桃仁・田七・牛膝・水蛭などが使われているようです。証の弁証に加えて活血化お・破血・通絡を組み合わせて出してあるようです。

 証型を7つに分類してあります。

1、気虚血瘀
2、陽虚寒凝
3、陰虚熱瘀
4、気陰両虚
5、湿熱血瘀
6、水湿血瘀
7、湿濁血瘀

 中医学のよくわからない人でも腎臓病の7つの分類に湿という字が3つも出てくるので水との関りをつよく感じると思います。

 腎臓はとても重要な臓器です。

 浮腫みは脾・肺・腎の3臓から考えるのは前に書きました。尿タンパクは必要なものがでていってしまうということで気の固摂機能の失調が大きな原因になります。黄耆の大量に使う事が多いのは黄耆の益気固摂の働きを期待するものです。方剤で運用するときは補中益気丸+衛益顆粒とか補気と固摂を強めるのがいいと思います。ただ、弁証が一番ですので弁証無くしてなにもつかえませんがこういったやり方で効果を上げています。