梅雨の漢方

 梅雨といえば 湿気・・・陰気の多い季節です。かび・ばい菌が繁殖しやすい季節です。傷が治りにくかったり、食中毒、食あたりしたり、おでき・湿疹がジュクジュク・水虫、膀胱炎、関節の痛みや腫れ・腰痛、痰・・・・湿気の影響をうけます。脾気虚、腎陽虚、肺気虚など内湿があるタイプは湿気の影響を受けやすいようです。体内の湿の処理は脾の運化・肺の宣発粛降・腎の気化によって行われます。外湿の影響を受けないようにしましょう。温かいものを飲んだり食べたりするように心がけ、雨にぬれたり汗をかいたとき、必ずふいて着替えるなどしましょう。

 身体の湿気が多い(内湿)タイプの人は外の湿気の影響をうけやすいといえます。身体の中の湿気は水っぽいものとネバネバした粘度の高いものとあります。粘ったものは痰といわれています。五臓で水液代謝と関わっているのは脾・肺・腎です。肺は汗や呼吸で水分を外に出します。腎は尿から出します。脾は水液を運化します。つまり水液の運送屋さんです。水液代謝に異常が現れた時は何処に問題があるか考えます。

 「のどが乾いちゃった」
 「昨日汲んでおいた水と今汲んだ水とどっちがいい?」
 「・・・・・・今汲んだ水に決まってるじゃない! プンプン!」
 
 溜まって停滞しているものはきれいではありませんね。人の身体の中も同じです。水液代謝の失調により溜まったものは湿、湿濁、痰、痰濁、濁飲・・・いろいろな言い方がありますが放っておきたくないものです。

 咳・息苦しい・胸苦しい・鼻づまりなどの肺の症状がでていたら、肺の宣発粛降の働きが失調するしている為に水が停滞しているのかな?と考えます。脾の水の運化が失調している時は脾虚の症状が伴います。運化食欲不振・消化不良・お腹がゴロゴロいう・軟便や下痢(弛緩性の便秘の時もあります)・だるい・疲れ易い胃下垂や脱肛などの内臓下垂、その他統血不足による出血などがあります。また気血の生成が低下すると心も弱まって考え過ぎ、思いすぎになりやすく不眠・動悸などが出てくることもあります。

 ・・・雨や冷たい飲み物など湿気はだめなんだ!働けないよ!・・・と脾が悲鳴をあげています 

 脾は湿を嫌うといい外界からの湿の影響を受けると脾の機能が失調します。これを寒湿困脾・・・冷たい湿気が脾を困らせてる・・・といいます。脾虚の人はダブルパンチですね。「足腰が弱くて浮腫みやすいし、耳鳴りが少しあって夜中に何度もおしっこにおきます。それに 寒がりでエネルギーも無いので、ついウトウト してしまう私です。」腎陽虚です。水液代謝の失調が『腎の水を主る』働きにある時は下肢の方に浮腫みがでます。また、身体の冷え・寒がるなど陽気不足が伴います。水を代謝するにはエネルギーが必要です。

 エネルギー・・・動力・・・燃焼・・・熱 というようにインスピレーションできると思いますが、人の身体も同じで、熱エネルギーが必要です。腎陰・腎陽は真陰・真陽といわれ身体の陰陽の本です。腎陽が不足すると代謝エネルギーは落ち込んで水は身体に停滞します。

 梅雨

 肺・脾・腎が虚している人は梅雨は体調が悪いですね。身体の除湿を考えましょう。水湿を外に出すのは

①尿から
②汗から
③便から
があります。

 「湿を治するに小便を利さざるは、それは治にあらざるなり」といわれているそうでうが、まずは余分な水湿はおしっこから出すことを考えます。皆さんが知っていてよく使われるのは五苓散です。五苓散は温めて水湿を除きます。働きは利水滲湿・温陽化気です。水を利し(通じさせ)湿を滲みださせ、温めて水湿に尿に変化させるエネルギーをアップする・・・と理解しています。
残尿感や排尿後しぶるような感じがして膀胱炎かな?という時に猪苓湯(ボウネツ錠)を服用する人も多いと思います。

 だから「猪苓湯って膀胱炎の漢方でしょ」って思っている人も多いと思います。排尿困難・排尿痛・血尿の症状がみられる状態を湿熱蘊結下焦(湿と熱が下の方の水の通り道に鬱滞してる)といって猪苓湯を使います。もう一つ水熱互結の時、猪苓湯を服用します。『もし脈浮、発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便利せざるものは猪苓湯之を主る』とか『少陰病、下痢、六七日、咳して嘔し渇し、心煩し眠るを得ざるものは猪苓湯之を主る』つまり身体に溜まった湿気と熱をさましながら尿から出してしまおう。というのが猪苓湯です。

 「関節が浮腫んだので防已黄耆湯飲みました。」
 「水肥りタイプなので防已黄耆湯がいいと思います。」

 こんな言葉を耳にします。防已黄耆湯は湿と関係ありそうだなという感じがしますが、どうでしょう。

防已黄耆湯を使う時は
風湿 脈浮 身重く 汗出で悪風する
風水 脈浮 身重く 汗出で悪風する
となっています。

 また服用後に皮下に虫のはうような感じがすることがあるが、衛陽回復の兆しだと書いてあります。衛陽は衛気のことで体表部を巡り、身体を温め外邪の侵入から身体を防衛する気です。つまり衛気不足で汗がもれやすいタイプの内湿を除く為の方剤といえます。もし湿が多い時はヨクイニンや五苓散を一緒に服用しましょう。またお腹が脹る時は枳殻や陳皮も服用しましょう。と書いてあります。

 梅雨の頃は寒湿や湿熱が問題をおこしますから注意しましょう。