喘息と漢方

 喘息は発作期と緩快期をくりかえします。発作時には咳・痰・胸苦しい、さらに重症になると呼吸困難・窒息ということにもなる大変な病気です。気管支に慢性的な炎症があり、ちょっとした刺激で発作が起きるということで、最近は発作をおさえていく為、吸入ステロイド剤が使われています。

 中医学で喘証と哮証が喘息にあたります。発作時にゼロゼロ痰の音がするもので、甚だしいと呼吸困難をおこすものを哮証といいます。宿痰が肺に潜伏していると考えられています。呼吸困難をおこし、甚だしい時は口を開き、肩をあげて呼吸するものは喘証です。

 症状のある時は症状に対する漢方薬(標治)を、症状がない時は体質を改善する漢方薬(本治)を用います。また、標本同治の時も多いです。西洋医学では気管支拡張剤・抗アレルギー剤・気道粘膜調整剤・ステロイドなど症状に応じて使います。

 漢方は薬効でもちいるわけではありませんので情報を集めなくてはいけません。冷えてでているのか?熱をもっているのか?
・・・寒熱は重用です。痰の量や性状・寒気・発熱・痛み・汗・・・

寒の時は麻黄湯・小青竜湯など
熱の時は麻杏甘石湯(麻杏止咳錠)・五虎湯など
熱痰がある時は温胆湯など
寒痰のある時は半夏厚朴湯・蘇子降気湯など
空咳や痰が喀出しにくい時は麦門冬湯や潤肺糖漿(養陰清肺)など

 症状に合わせて組み合わせます。本治の方は少し複雑です。病位といって病気の位置は肺にあるのですが、原因が肺にあるとはかぎりません。喘息の発作時は苦しくて息がはく事ができない状態です。中医学(漢方医学)では「肺は呼気を主る」といいます。息を吐くというのは肺の働きということです。だから、息がはけないのは肺の働きが失調しています。

 では、息を吸い込むのは?納気(吸気)は腎が主催しています。だから、息が吸い込みにくいのは腎が虚している証拠です。呼多吸少(はく息の方が吸う息より多い状態)といわれます。・・・このタイプは息が足りなくなるため、時々大きく吸い込みます。

 呼吸は肺と腎の共同作業!腎が弱ると呼吸が浅くなります。腎は陰陽バランスの基です。腎の陰陽を真陰・真陽といいます。ですから陰虚と陽虚を分けて考えます。

腎陰虚の場合は八仙丸(麦味地黄丸)、滋陰降火湯など
腎陽虚の場合は平喘顆粒(蘇子降気湯)、双料参茸丸、金匱腎気丸+参かい散(人参と蛤かい)など

 蛤かいはオオヤモリの尾で、補肺益腎・納気定喘(肺と腎を補い、吸気を納めて呼吸困難の状態を改善する)の働きがあります。また、冬虫夏草は補肺陰・益腎陽に止血化痰の働きがあるので陰虚にも陽虚にも使われます。

呼吸法で息を丹田まで深く吸むというのを聞いた事があるよ。
コーラスの時も深く吸い込むから腹式呼吸だよ。
丹田は臍下三寸で腎と関係してるのよ。

 哮証のように潜伏している痰がある時は脾も重用です。脾は『生痰の源(痰を生む源・・・痰の製造場所)』といわれます。さらに、肺とは相生(母子)関係です。食べ過ぎ、偏食などが誘引になって喘息をおこしている場合も多いです。肥甘厚味のものは痰をつくるので控えるほうがいいです。

肥・・・油(脂)っこいもの
甘・・・甘いもの      
厚・・・濃い味のもの

   
 脾虚痰湿がある時は健脾化痰の六君子湯・ストレスがあれば理気薬が加わった香砂六君子湯がよく使われます。もちろん肺が弱い(肺虚)の時もあります。それともう一つ、わがままな肝のせいで喘息がおきる事もあります。特徴は喘息が精神的なものから誘発されるということです。これを肝気横逆、肝気犯肺といいます。

 緊張すればするほど咳き込んだりする経験がある人もあると思います。またストレスによってむせて咳きがでて言葉を続けられないような場面を見た事のある人もいると思います。いずれにしろ体質改善は必要だと思いますが 気長に時間をかける必要があります。