病気と漢方

2017-08-27

命門の火
中医臨床147号は老齢症候群の特集です。
あと数年で65歳以上の高齢者が30%をしめるようになります。30%というと3人か4人に1人は高齢者という事になります。
書いている私も入ります。

 しかし、若々しくて元気な人も多く見られます。やる気とまでは行かなくてもやりたい気持ちは大事です。

あの温泉に行ってみたい。あの景色を見てみたい。じゃあ行こう!
美味しそう。じゃあ作ってみよう。

など日常生活の中で小さな感動があり、小さな望みを持ち、行動できるのが若さだと思います。

 身体を動かすのがおっくうになった。
それは脳と関係している事が多いです。
軽度認知障害のテストは筋力なども見ていきます。
身体を動かすのは脳から指令が行って動かせているからです。

 脳梗塞のリハビリで身体を動かしていく事は脳を動かす事につながります。
認知症予防には身体を動かす事やおしゃべりしたり、歌ったり表情を動かす事も大切です。

 認知障害は「脳血管型認知症」「アルツハイマー型認知症」「その他」とわかれています。
脳の血管の動脈硬化によって酸素や栄養がうまく運ばれない為の認知症は脳梗塞とも関係しています。
また、アルツハイマーは脳にβ―アミロイドというタンパク質の沈着がある事が解かられています。

 中医学でとらえると認知症は病位は脳です。しかし中医学で脳は奇恒の腑といい五臓六腑を素に考えるものです。
肝・腎・心・脾は脳と関連が強く、肝の疏泄機能は気の流れのコントロールや情緒とも関係しています。
 腎は髄を生じ、髄海(脳)に通じるといい、脳の物質面をささえています。
心は神を蔵すといいますが、神は脳の思惟活動をさし、機能面の中心になります。
脾は気血生化の源で他の臓腑をバックアップするとともに心とは相生・肝とは相克関係で繋がっています。
また、腎気腎精を後天的に補うので、後天の精といわれます。
このように脳そのものでなく五臓を通じての脳で考えてます。

病因病機(本虚標実)

 中医学は病気の原因や機序を重要視します。本虚標実とは根本原因は虚にあって、それによって出来た実邪があるという意味です。
病因は虚(血精の不足・五臓の衰え)によるものです。
標実は痰湿・瘀血・火さらに風です。
その虚や実邪により脳髄の減少と神機の失調し認知障害が出てきます。

 認知症に人に良く見られる証は陰虚・血虚・気虚・痰濁・血瘀・火だそうです。
また陰陽の失調は清陽を上昇できずに神を養う事が出来なくなりますし、
濁飲も清陽の上昇を阻害するばかりでなく、神を損傷します。

 心血の不足や腎精不足は髄海を充たす事ができませんし、心気の不足や腎陽の不足すると神明の失調や脳に栄養が届かないなどになります。
*腎陽・腎精は髄を生ずる上で必要な要素です。髄が生じなければ髄海を充たす事はできません。

 また虚の結果生じた痰や瘀血が化熱し痰火になると、痰は粘って益々竅を塞ぎ、こびりついて瘀血も酷くなります。

 七情の失調が原因という考えもあります。肝鬱から脾が過剰に克されたり、飲食が不摂生だったり、思慮過度などから脾が虚すと痰がより生まれて九竅を覆って虚実挟雑し複雑になります。

 中医学の最高峰にいる張教授は髄海に通じる腎の陰陽を重要視しています。

治療原則

 肝腎不足や心脾両虚の場合、通常は滋補肝腎や健脾養心などを行うが、認知症の場合は瘀血や痰濁が絡んでいたり、虚火や肝火を伴ったりしているので単純にはいきません。
 補腎する場合でも腎精髄から考えて填精の力のある方剤を選ぶべきだと思います。
 また活血化瘀・化痰開竅も必要です。

 張教授は認知症の治療は補腎健脳養心・填精益髄を目標とすると書いておられます。
 以下の4点を念頭にいれて弁証論治する事が重要

①陰陽のバランス
②補血温陽・固斂精気
③袪痰化瘀
④昇達清陽・固護後天

2016-09-12

「アルコールとかを解毒する」
「もの言わぬ臓器っていわれていて気がつかないうちに悪化してるんだって」
「脂っこいものばかり食べてると脂肪肝になっちゃうよ」
「脂肪肝は癌化するの?」

 肝臓に関する知識は色々ですが、解毒というのは誰でも考える事だと思います。

 肝臓の働きは解毒だけではありません。肝臓は物質の代謝と関わっていて 胃腸で消化吸収された栄養素を代謝・貯蔵します。

*ブドウ糖をグリコーゲンとして貯え必要に応じてブドウ糖にして血液中に送り出す。
*アミノ酸から大切な働きをする血漿タンパク質などをつくる。
*脂質代謝 脂肪酸の合成や分解・コレステロールやリン脂質の合成
*脂溶性ビタミンやビタミンB群・ミネラルの貯蔵
*コレステロールと赤血球から胆汁酸やビリルビンを作る
*ホルモンの代謝

 こういった働きが『生体の化学工場』と言われる所以です。

肝臓 中医学で『肝は血を蔵す』といいます。実際、1分間に肝臓に1,000ml~1,800mlの血が流れこんでいて、これは心臓が送り出す血液の25%くらいにあたるそうですから、中医学理論にあてはまると思います。生理学がない時代にこの理論をたてたのは、いかに観察力があったかと感心します。

 肝機能障害になると倦怠感・むかつき・下痢といった脾の働きが悪い症状がでますから、これに対してはやはり健脾します。またイライラ・怒りっぽいなど精神不安もおき易いことからも肝の疏泄の働きをよくする疏肝も必要です。

 十年以上前ですが、ウイルス性肝炎に小柴胡湯が効くという事で医療現場でウイルス性肝炎の人に使い、副作用がでて間質性肺炎で亡くる人まで出た事がありました。これは証をみずにむやみやたらに使った事が原因といわれています。中医学に精通している人達は“小柴胡湯は肝臓疾患を中心に年間100万人以上が内服していた。漢方薬全体の売り上げは年間約1,200億円で、小柴胡湯はその約3割を占めていた。”という事実に驚かずにいられませんでした。

 では、小柴胡湯は怖い漢方薬なのでしょうか?小柴胡湯は中医学では和解剤に属します。半表半裏証に使う方剤です。証を誤らず、また肝陰や肝血を補いながら使えば、ウイルス性肝炎にもっと良い結果が出たのではないかと思います。小柴胡湯は疏肝と健脾の働きの両方を兼ねた方剤です。しかし肝陰・肝血を補えないので、これだけで長期の使用はしません。逍遥散なら当帰と芍薬で養血柔肝できます。

 菅沼栄先生監修の弁証論治の本では、肝炎を病因病機から4つのタイプに分類しています。肝気鬱結・瘀血内停・肝陰不足・肝胆湿熱です。肝気鬱結には逍遥散は使いやすいといえますが、どの程度の疏肝剤が必要かは弁証する必要があります。

 黄疸に使われる茵蔯蒿はカワラヨモギの幼苗ですが退黄の働きがあります。そればかりでなく清熱除湿の働きや軽い疏肝作用もあるので黄疸がなくても使えます。菅沼先生は肝炎予防に煎じて飲むといいと書いています。食養生としては 浮腫む時は大豆・ヨクイニン・山芋・アズキ・はすを、脂肪肝の時は山楂子・とうもろこし・ヨクイニンを、出血傾向の時は黒豆を摂る様にすると良いと書いています。

 肝機能の数値が異常になったら早めに漢方薬をつかって、戻す努力をしておきませんか?

2016-07-09

腎臓は簡単に言うと尿を作る工場

腎臓 血液中の尿素・尿酸・クレアチニン・食塩・電解質・水などで尿を作って排泄します。

 腎臓の悪い人はタンパク質を制限しますが、それはタンパク質が分解してアミノ酸になり、体内で利用された後アンモニアなどになり、さらに尿素になって腎臓で処理され尿になります。

 つまり、腎臓が弱っている時にタンパク質を取りすぎると腎臓は無理に頑張らないといけない状態に追い込まれてしまうわけです。

 腎臓の中にあるネフロンは腎小体(毛細血管が集まった糸球体・それを包むボウマン嚢)と尿細管をあわせたもので、尿を作る最小単位のものといえます。それが一つの腎臓に100万個あるといわれています。

私達の1個の腎臓の中に尿を作る工場が100万個

 100万個の中の1つの糸球体の中をのぞいてみると、毛細血管が毛糸をくるくる指で巻いたような感じに中を巡っています。いかに細いか想像できると思います。

 糖尿病や高尿酸血症・高脂血症などの場合、血液はどろどろです。また水分不足も血がどろどろします。そんなに細い所を通過するのだから通過障害が起きるでしょう。

 その糸球体の中で血液のろ過が行われています。GRFは糸球体のろ過量ですが値が低い場合は100万個のうち使えなくなったものがある程度あるという事です。言い換えれば糸球体の中の毛細血管が細動脈硬化を起こし、機能しなくなったのがあるので、ろ過の量が減ったという事です。この状態を中医学では瘀血と考えます。

瘀血は重要ポイント!

 『血管力』の本を出されている横澤隆子先生は慢性腎不全のモデル動物を作った事で学会の脚光を浴びましたが、その後慢性腎臓病に良い生薬や漢方薬の研究をしてこられました。その中で丹参に抜きん出た効果がある事を確認されました。

中薬学には丹参の3つの効能が載っています。
①活血去瘀
②涼血消腫
③清心除煩
です。

 つまり丹参は瘀血に対応する生薬です。また中医学では完全に動きの止まった血を乾血とか死血とかいい、破血の働きのあるものを使います。水蛭・三稜・莪朮などがそれにあたります。

更に病因を追求

 しかし瘀血のみ考えるかというとそうではありません。瘀血は結果ですから、瘀血にいたった原因も考えなくては本当の意味の治療にはなりません。とはいえ瘀血はそのままにしておく事はできませんから、活血化瘀や破血などの方法は必要です。

 川の水の流れを考えてみてください。スムーズに流れる為には水量も必要ですし、勾配も必要です。水量は陰血の量ですから血虚や陰虚の人は不足しています。勾配は重力による力でから、気の推動力の不足です。これは宗気と関係が深く、宗気は脾の働きにより取り込まれる水穀の精微から作られる気と肺の力で大気から取り込まれる清気によって作られるので肺や脾の弱いと宗気が不足しやすいといえます。

 また、宗気を作る事が円滑に行われる為も、宗気が血管内でしっかり働ける為にも肝の疏泄作用も重要です。原因をしっかり把握してオールラウンドに治す方法を考えていく事が必要です。

GRFが低いなら活血化瘀+原因にそった漢方で慢性腎炎に移行するのを予防しましょう

GRF値

■60以上…蛋白尿など他に問題がなければ大丈夫ですが、高血圧・高脂血症・肥満など人は注意しておきましょう。
■60以下45以上…腎機能が軽度~中等度低下 CKD(慢性腎臓病)の疑いがあります。心筋梗塞や脳卒中など循環器系疾患にかかりやすいので受診するなど注意が必要です。
■45以下30以上…腎機能が中等度~高度に低下 CKDが強く疑われます。
■30以下15以上…腎機能が高度に低下 CKDです。腎不全なる危険性が高いです。
■15以下…透析療法が必要になってきます。

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