②人の身体や病気について中医学はどんな見方をしているのでしょう?

 五臓は心・肝・脾・肺・腎の総称です。五臓の働きに関しては西洋医学と認識がちがいます。

 簡単言うなら心臓と心(こころ)です。「あ~考えただけでドキドキしちゃう」・・・まさにこれが心です。ドキドキは血液を送り出す拍動です。そして考えるとは大脳の働きです。ですから、中医学的には『心は血脈を主る・心は神を蔵す』といいます。心気、心陽や心血、心陰、が不足するとこの働きに支障がでます。心気不足には麦味参顆粒、心陽不足には真武湯、心血虚には帰脾湯、心陰虚には天王補心丹などを使います。また、血脈がうまく流れない時は冠元顆粒や血府逐お湯を使います。

 肺は呼吸する所です・・・というのは常識、西洋医学と同じです。でも中医学になると『一身の気を主る』といい呼吸だけでなく、気の働きそのものにも考えが及びます。肺が弱いと元気がでなかったり、気が弱くなってすぐ悲しくなってしまったりも肺と関連して考えます。肺の呼吸の上下運動は『宣発粛降』という働きによってなされます。またこの働きは水の輸送とも関わっていて腎に水を下ろしたり、発汗したりします。風邪は呼吸器の病気ですが、高熱で汗が出ずに熱が下がらないのは肺の宣発の働きが風邪(ふうじゃ)によって失調したからです。風寒に対する葛根湯、桂枝湯や風熱にたいする天津感冒片や涼解楽は発汗作用(宣発させる)働きがあります。時に急激に顔から浮腫み熱っぽく尿も出ない時は越婢湯を使います。その他、心肺機能という言い方をしますが、漢方でも肺が心臓の『心主血脈』をバックアップしているとして、『肺朝百脈』といいます。

 脾は『運化を主る』といいますが、これは食物の消化吸収、栄養分の輸送、さらに水液代謝の事です。胃腸の働きに近いですが、腸管から吸収された後の部分も入ってくるのでもっと広範囲です。また、栄養分(水穀の精微)を身体の上の方に上げる働きの事を昇清を主るといいます。つまり身体の上の方に向かうエネルギーは脾気がになっています。昇清が弱まると内蔵をささえて要られなくなって下垂がおこります。胃下垂や脱腸、子宮下垂などは脾気(中気)の不足によっておきます。ですから そういう時は益気昇陽のホイオー錠(補中益気湯)などを長期に服用します。また、脾気の働きに統血があります。中医学では血が脈の外に漏れないのは脾気が作用しているからだと考えています。ですから脾気虚の人の不正出血や血尿 ちょっと圧迫しても青あざになるなどは脾の統血作用の弱まりによるので帰脾湯などで改善できます。

 肝は血を蔵すといって血の道(女性の生理)と密接に関係しています。また疏泄を主るといって気機の調節を行っています。つまり、気のコントロールを行っている中枢のような感じです。気はエネルギーでもあり、気持ちの気・・・つまり情緒でもあります。ですからストレスにより情志が失調すれば肝の疏泄も失調し時に蔵血作用にまで影響が及びます。また、逆に血や陰の不足により 肝血が肝気と調和できないまたは肝陰が肝陽を抑えられなくなると、情志の失調がおきます。更年期障害や月経前緊張症など女性の生理と関係の深い疏泄失調には逍遥丸などを使います。肝が充実し疏泄の働きをスムーズにしておくには肝血が充足していなくてはなりません。当帰が女性の聖薬といわれるのは補血し調経する働きがあるからです。女性は毎月生理があるので未病先防 当帰のシロップの婦宝当帰膠を飲んでいきのが衰えない秘訣です。

 人の一生と関わりの深いのが腎です。『精を蔵し 生長・発育・生殖を主る』といいます。精とは身体の根本的な力のようなもの(精根つきはてるなどの時の精)をいうのと同時に身体に対し微量で影響を及ぼすホルモンなども精です。腎気が弱ければ生長・発育でできないわけですから、成長ホルモンは腎と考える事も出来ると思います。また、生殖も腎ということは性ホルモンも腎と考える事もできます。補腎は不妊や更年期、また発育不足や老化防止にかかせない方法です。益精の力があるものに鹿茸、海狗腎、紫河車などの動物薬があります。これが使われているのは参茸補血丸・参馬補腎丸などです。また腎は水を主るといい、尿を作り排泄するのは腎の気化作用によります。さらに悩も腎と関係しています。腎は骨を主り 髄を生じ髄海に通じるといいます。この言葉は骨 脊髄 延髄 脳髄・・皆腎と関わりがある事を示しています。脊髄の関係から来る痛みやしびれまた健忘や認知症予防にも補腎はかかせません。もう一つ腎の働きの中に呼吸の吸気があります。腎は吸気を主る・・・つまり深く息を吸い込む力は腎にあると言ってるわけです。腎が弱まると息を吐く方が多く吸う方は少ないという症状が現れます。この時は平喘顆粒(蘇子降気湯)を使いますが、場合に応じて八味丸や冬虫夏草なども使います。